ファクタリングにおける割引率とはいわゆる手数料のことを指します。ファクタリングでは必ず手数料が発生しますが、法的な制限はなく、各社の審査によって変動します。
今回は割引率の決定を左右する要素や注意点について解説していきます。
ファクタリングの割引率とは?計算方法
割引率とは手数料の割合を指す
ファクタリングの割引率とは、ファクタリング会社が売掛金の現金化を行う際に差し引く手数料の割合を指します。
具体的には売掛金の額に対して一定の割合で手数料が設定され、ファクタリング会社に支払うことになります。この割引率はファクタリング会社によって異なり、業界の相場や契約内容・売掛金の回収期間・取引先の信用などに影響されます。
ファクタリングの割引率は一般的に2%〜20%程度となることが多いですが、売掛金の額や回収期間が長い場合は、割引率が高くなることがあります。
この手数料は売掛金の現金化を迅速に行うためのコストであり、ファクタリングを利用する際には事前にこの割合を確認しておくことが大切です。
100万円で割引率が10%の場合は受け取りは90万円
例えば100万円の売掛金に対して割引率が10%の場合、ファクタリング会社に差し引かれる手数料は10万円になります。そのため最終的に受け取る金額は、100万円から10万円を引いた90万円となります。
このように割引率が設定されていることで、売掛金の現金化は迅速に行えますが、受け取る金額は減少します。
ファクタリングを利用する際は手数料の割合や実際に手にする金額をしっかりと把握し、資金繰りにどの程度影響を与えるかを事前に計算しておくことが重要です。
手数料が高すぎる場合は他のファクタリング会社と比較し、より適切な条件で利用できる会社を選ぶことが必要です。
ファクタリングの割引率が決まる要素
売掛先の信用力・経営の安定度・未回収リスク
ファクタリングの割引率は売掛先の信用力や経営の安定度・未回収リスクによって大きく影響されます。売掛先の信用力が低い場合や経営が不安定な場合、ファクタリング会社はそのリスクを補償するために割引率を高く設定します。
売掛金が回収できるかどうかが不確実な場合、ファクタリング会社はリスクを回避するために、受け取る金額から差し引く手数料を増やします。
例えば売掛先が新興企業や過去に支払い遅延があった企業の場合、その取引のリスクが高いため割引率が高く設定される可能性があります。
売掛先が大手企業や信用が高く経営が安定している場合は、回収リスクが低いため、割引率が低くなることが一般的です。
極端な話ですが上場企業や公共団体が売掛先であれば、すぐに倒産する・支払い遅延が起きるリスクは低いため、手数料も安くなる傾向にあります。
売掛金の大きさ
ファクタリングの割引率は、売掛金の金額によっても影響を受けます。一般的に売掛金が大きければ大きいほど、割引率は低くなる傾向があります。
売掛金が大きい場合とファクタリング会社は回収コストが相対的に低くなるため、手数料を少なく設定することができます。」
また大きな金額の取引は、ファクタリング会社にとっても利益が大きいため、割引率を抑えた条件を提供できることが多いです。
逆に小規模な売掛金の場合はファクタリング会社は取引にかかる手間やコストをカバーするために、割引率が高くなる傾向があります。
少額の取引ではファクタリング会社が取引から得られる利益が少ないため、そのリスクを手数料に反映させることがあります。
支払い期日までの日数
ファクタリングの割引率は、売掛金の支払い期日までの日数にも影響されます。支払い期日までの期間が長い場合、ファクタリング会社は回収リスクが高くなると見なすため、割引率が高く設定されることがあります。
特に支払いが数ヶ月後に設定されている場合、ファクタリング会社はその期間中のリスクをカバーするために手数料を増やす傾向があります。
逆に支払い期日までの日数が短ければ、ファクタリング会社の回収リスクは低くなるため、割引率が低くなる可能性があります。
たとえば数週間以内に支払いが行われると予測できる場合、ファクタリング会社は売掛金の回収までのリスクが少ないと判断し、低い割引率を適用することが一般的です。
利用者の信用力・利用回数・態度
ファクタリングを利用する企業の信用力や過去の利用回数、取引態度も割引率に影響を与えます。
企業の信用力が高く、過去にファクタリングを利用してきた実績があり、支払い遅延がない場合はファクタリング会社はリスクが低いと評価し、低い割引率を提供することがあります。
逆に信用力が低い企業や過去に支払い遅延があった場合、ファクタリング会社はそのリスクを補償するために割引率を高く設定します。
また利用回数が少ない企業や初めて利用する企業に対しては、ファクタリング会社が信頼性を判断するため、少し高めの割引率を適用することもあります。
契約方式によって異なる割引率の相場・目安
2社間ファクタリングでは5〜20%前後
2社間ファクタリングは、ファクタリング会社と売掛金を譲渡する企業(利用者)との間で直接契約を結ぶ方式です。この方式では売掛先には通知が行われず、支払いはそのまま利用者が行います。
2社間ファクタリングの割引率は一般的に5%〜20%前後となりますが、実際の割引率は売掛先の信用力や支払い期日、取引額、業種などによって異なります。
2社間ファクタリングでは、売掛先に通知が行われず売掛金の回収も利用が行うため、ファクタリング会社が回収リスクを背負うことになります。
このため売掛先の信用力が低い場合や支払い期日が長い場合、リスクを補償するために割引率が高く設定されることがあります。
3社間ファクタリングでは1〜10%前後
3社間ファクタリングはファクタリング会社・売掛金を譲渡する企業・売掛先の3者が関与する方式です。この方式では売掛先に通知を行い、支払いはファクタリング会社に直接行われます。
3社間ファクタリングの割引率は、通常1%〜10%前後となります。2社間ファクタリングに比べて、割引率が低くなる傾向があります。
3社間ファクタリングでは、売掛先に通知が行うため、ファクタリング会社が売掛金の回収を行うことになります。利用者が使い込みをして未回収になるリスクが低くなり、割引率が低く設定されることがあります。
この方式の最大のメリットは、売掛先の信用が高い場合に低い割引率で現金化ができるため、資金調達コストを抑えながら、迅速に資金を得ることができる点です。
ただし売掛先に債権譲渡通知を行うため、即日といったスピード感では調達できず、1〜2週間は時間が必要となります。
ファクタリング利用時にかかる費用
主には手数料・債権譲渡登記費用・印紙代が発生
ファクタリングを利用する際には、いくつかの費用が発生します。主な費用としては、以下の3つが挙げられます。
- ファクタリング手数料
これはファクタリング会社に支払う費用で、売掛金に対する割引率で計算されます。割引率はファクタリング契約によって異なり、売掛先の信用度や契約条件、回収期間などによって変動します。
2社間ファクタリングの場合は5%〜20%程度、3社間ファクタリングの場合は1%〜10%程度の手数料が一般的です。この手数料が最も大きな費用となります。
- 債権譲渡登記費用
債権譲渡登記とはファクタリング契約に基づいて売掛金を譲渡する際に行う登記手続きです。特に2社間ファクタリングでは、売掛金が譲渡されたことを第三者に証明するために、債権譲渡登記を行うことが求められます。
この登記には法的手数料がかかり、金額は登記の内容や対象となる金額によって異なります。
- 印紙代
ファクタリング契約に関しては、契約書に印紙を貼付する必要がある場合があります。印紙代は、契約書の内容や契約金額に応じて変動し、通常は数百円から数千円程度です。
印紙代は法的に必要な費用であり、契約書を作成する際に必ず確認しておく必要があります。
ファクタリング手数料に消費税はかからない
ファクタリング手数料には消費税はかからない点が特徴です。日本の消費税法では、ファクタリング取引は「金銭の貸付」に該当し消費税の課税対象外とされています。
そのためファクタリングの手数料に消費税は適用されず、記載された手数料の額がそのまま費用となります。
ファクタリングの割引率を抑えるコツ
複数社に相見積もりを取る
ファクタリングの割引率を抑えるためには、複数のファクタリング会社から相見積もりを取ることが非常に有効です。異なるファクタリング会社が提示する条件を比較することで、最も有利な契約を選ぶことができます。
相見積もりを取ることで割引率が適正かどうかを確認し、過剰に高い手数料を避けることができます。
ファクタリング会社によっては、同じ売掛金でも割引率が大きく異なる場合があります。また複数の会社と交渉することで、割引率を引き下げる余地がある場合もあります。
特に事業の規模や取引先の信用力が高い場合、ファクタリング会社にとっては安定した取引先となるため、より良い条件を提示してもらえる可能性が高くなります。
相見積もりを取ることで、どのファクタリング会社が最もコストパフォーマンスが高いかを判断でき、結果的に割引率を抑えることができるでしょう。
同じファクタリング会社で利用実績を増やす
ファクタリングを繰り返し利用している場合、同じファクタリング会社で利用実績を増やすことも割引率を抑えるための有効な方法です。
ファクタリング会社は継続的な取引を通じて、顧客の信用力や支払い能力を確認し、リスクを評価していることがあります。実績が積み重なることで、割引率が引き下げられることがあります。
また同じファクタリング会社を利用し続けることで、取引のスムーズさや手数料の交渉のしやすさも向上します。
ファクタリング会社にとっても、長期的な取引先が安定的な収益源となるため、今後も契約を継続する意向があれば、割引率の引き下げが期待できることがあります。
同じ売掛先でファクタリングを利用する
同じ売掛先でファクタリングを繰り返し利用することも、割引率を抑えるための有効な方法です。ファクタリング会社は、同じ売掛先に対して安定した支払いが行われている場合、そのリスクが低いと判断します。
売掛先の信用度が高いと評価されることで、割引率が低くなる可能性があります。
また売掛先との取引が継続しており、支払いが順調に行われていることがファクタリング会社に証明されれば、低い手数料を提示することが多いです。
特に過去の支払い履歴が良好であれば、ファクタリング会社にとっても安心して取引を継続できるため、割引率の引き下げが期待できます。
ファクタリング会社との交渉
割引率を抑えるためのもう一つの方法はファクタリング会社との交渉です。ファクタリングの手数料は一律ではなく、契約内容や交渉によってある程度の調整が可能です。
特に安定した取引を行っている企業や取引額が大きい場合には、交渉によって割引率を引き下げる余地があります。
競合他社の条件や見積もりを示すことで、他のファクタリング会社と比較して有利な条件を引き出すこともできます。交渉によって、契約条件や割引率が改善される可能性があるため、積極的にコミュニケーションを取ることが大切です。
ファクタリング会社を乗り換える
割引率が高すぎると感じた場合や、ファクタリング会社との交渉が難航した場合には、ファクタリング会社を乗り換えることも一つの選択肢です。
複数のファクタリング会社を比較することで、より良い条件を提供している会社を見つけることができます。ファクタリング会社を乗り換える際には、手数料だけでなく、サービス内容や契約条件もよく確認することが重要です。
特に業界に特化したファクタリング会社や、特定の条件に強い会社が存在する場合があります。乗り換えを検討する際には、相見積もりを取って、最も条件が良い会社を選ぶことが重要です。
乗り換えによってより低い割引率でサービスを利用できる場合もあるため、定期的に契約内容を見直し、最適な選択をすることが大切です。
ファクタリング割引率に関する注意点
20%以上などの場合は相場より高いため注意
ファクタリングの割引率は通常、5%〜20%程度の範囲で設定されることが一般的ですが、20%以上の割引率が提示された場合は注意が必要です。
特に割引率が相場よりも高い場合、そのファクタリング契約は不利な条件である可能性があります。
割引率が高くなる要因としては売掛先の信用力が低い・支払いサイトが長期である場合、または取引額が少額である場合などがあります。
しかし割引率が高すぎると手数料が多く差し引かれ、実際に手にする金額が大きく減少してしまうため、資金調達コストがかさんでしまいます。
もし20%以上の割引率が提示された場合は、他のファクタリング会社と比較して、適正な条件かどうかを確認することが重要です。
高い割引率を受け入れなければならない理由がある場合でも、その理由をよく理解し、納得した上で契約を進めるようにしましょう。
諸経費・事務手数料など使途が不明な場合も要確認
ファクタリングを利用する際、割引率以外にも追加で発生する費用があることがあります。例えば、諸経費や事務手数料などが含まれている場合、それらの詳細について事前に確認しておくことが非常に重要です。
ファクタリング会社によっては契約時に提示された費用以外に、後から追加で費用が発生することもあります。費用が不透明な場合、契約前に詳細を確認し、書面で明記してもらうことが必要です。
ファクタリング契約を結ぶ際には、契約書に記載されているすべての費用項目をしっかりと理解し、納得した上で契約を進めるようにしましょう。
費用が不明確なままで進めてしまうと、後で不利な条件を強いられる可能性があるため、十分な注意が必要です。