資金繰りの改善策として広まったファクタリングですが、同じ売掛債権を複数のファクタリング会社に譲渡する「二重譲渡」は、詐欺罪に問われる可能性がある重大な違法行為です。
発覚すれば企業の信用失墜だけでなく、刑事罰を受けるリスクも高まります。本記事では、ファクタリングの二重譲渡がどのようにばれるのか、万が一ばれた場合の影響、そして罪に問われないための正しい利用方法を解説します。
ファクタリングの二重譲渡とは
ファクタリングとは企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、即座に資金を得る手法です。資金繰りの改善やキャッシュフローの安定化に役立つため、多くの企業に利用されています。
しかしファクタリングには注意が必要な側面もあります。その一つが「二重譲渡」です。
二重譲渡とは同じ売掛債権を複数のファクタリング会社に譲渡する行為を指します。この行為は法的に認められていないため、詐欺罪や横領罪に問われる可能性があります。
具体的には企業が売掛金をファクタリング会社に譲渡した後、別のファクタリング会社にも同じ売掛金を譲渡することで、二重に資金を得ようとする行為です。
このような行為はファクタリングの本来の目的である資金調達の透明性を損なうだけでなく、企業の信用を著しく低下させるリスクを伴います。
ファクタリングを利用する際は、必ず一つの売掛債権を一つのファクタリング会社にのみ譲渡することが重要です。
ファクタリングで二重譲渡がばれる理由
ファクタリングにおける二重譲渡が発覚する理由には、どのようなものがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
審査時に登記情報の確認が入る時
ファクタリングを利用する際、ファクタリング会社は申請企業の信用状況を確認するために、さまざまな審査を行います。
その中でも特に重要なのが登記情報の確認です。企業の登記情報には法人名、所在地、代表者名、設立年月日などが記載されており、これらの情報は企業の信頼性を判断する上で欠かせない要素となります。
ファクタリングの審査時にファクタリング会社は登記情報を確認することで、申請企業が過去にどのような取引を行ってきたのか、現在の経営状況がどうであるかを把握します。
このプロセスにおいてもし二重譲渡が行われている場合、登記情報に不整合が生じることがあります。
たとえば同じ売掛債権が異なるファクタリング会社に譲渡されている場合、登記情報の確認によってその事実が明らかになる可能性が高いのです。
支払い期日になっても送金できなかった時
ファクタリングにおいて、支払い期日が過ぎても送金が行われない場合、二重譲渡の疑いが強まります。ファクタリング契約では、売掛債権の譲渡と同時にファクタリング会社がその債権に基づく支払いを受ける権利を持つことになります。
しかし仮に同じ債権が他のファクタリング会社にも譲渡されていた場合、支払いが行われないことで、どちらのファクタリング会社も債権の回収ができなくなります。
このような状況が発生すると、ファクタリング会社は債権の真偽を確認するために、企業に対して問い合わせを行うことが一般的です。
企業が二重譲渡を行っている場合、支払いが滞ることでファクタリング会社はその事実を把握するきっかけを得ることになります。
さらに支払いが遅延することで、企業の信用にも悪影響が及び、取引先や金融機関からの信頼を失うリスクが高まります。
経理担当者に問い合わせがあった時
ファクタリングの二重譲渡が発覚する一因として、経理担当者への問い合わせが挙げられます。企業がファクタリングを利用する際、売掛債権の譲渡先となるファクタリング会社は、取引先の経理部門に対して確認を行うことがあります。
この確認は売掛金の支払い状況や譲渡の正当性を確保するために必要なプロセスとなっています。
もし経理担当者が同じ売掛債権について異なるファクタリング会社からの問い合わせを受けた場合、二重譲渡の疑いが生じます。
特に経理部門は企業の財務状況を正確に把握する役割を担っているため、売掛金の管理が不適切であると判断されれば、企業全体の信用に影響を及ぼすことになります。
したがってファクタリングを利用する際には、経理担当者との連携を密にし、売掛債権の管理を徹底することが重要です。二重譲渡を避けるためには、譲渡先のファクタリング会社を一つに絞り、透明性のある取引を心がけることが求められます。
ファクタリングで二重譲渡がばれた場合どうなるのか
ファクタリングにおいて二重譲渡が発覚した場合、企業にとって深刻な影響が及ぶことになります。ここでは主なものを3つご紹介します。
企業の信用を失う
ファクタリングの二重譲渡が発覚した場合、企業にとって最も深刻な影響を与えるのは信用の失墜です。企業は取引先や顧客、さらには金融機関からの信頼を基盤に成り立っていますが、二重譲渡が明るみに出るとその信頼は一瞬で崩れ去ります。
特にビジネスの世界では「信用」が最も重要な資産の一つです。これを失うことは企業の存続に直結する問題となるでしょう。
信用を失った企業は取引先との関係が悪化し、新たな取引を結ぶことが難しくなります。また金融機関からの融資も受けづらくなり、資金繰りがさらに厳しくなる可能性があります。
これにより事業の運営が困難になり、最終的には倒産の危機に直面することも考えられるでしょう。
さらに企業の信用失墜は、従業員や株主にも悪影響を及ぼします。従業員は不安を抱え、モチベーションも下がり、優秀な人材が離職するリスクも高まります。
株主にとっても企業の信頼性が損なわれることは投資のリスクを増大させ、株価の下落を招く要因となります。
詐欺罪・横領罪に問われる
ファクタリングにおいて二重譲渡が発覚した場合、企業は詐欺罪や横領罪に問われる可能性があります。詐欺罪は、他者を欺いて財物を不法に取得する行為を指しますが、二重譲渡はまさにこの詐欺行為に該当します。
売掛債権を複数のファクタリング会社に譲渡することで、同じ債権に対して複数の資金を得ることは、明らかに不正な行為です。
また横領罪は他人の物を不法に占有し、自己のものとして扱う行為を指します。ファクタリングにおいて、譲渡した売掛債権が他のファクタリング会社に対しても譲渡されている場合、企業はその債権を不正に利用していると見なされ、法的に厳しく罰せられます。
さらに詐欺罪や横領罪が成立すると、企業の代表者や経営者も個人として責任を問われることがあります。これにより、企業の信用が失墜し、取引先や顧客からの信頼を失うだけでなく、個人も刑事罰を受けるリスクが高まります。
事業が継続できなくなる
ファクタリングの二重譲渡が発覚した場合、資金繰りが悪化する可能性が高まります。二重譲渡が明らかになると、ファクタリング会社からの信頼を失い、今後の取引が難しくなるため、資金調達の手段が限られてしまいます。
日常の運営資金が不足し、従業員の給与支払いや仕入れの支払いが滞るリスクも考えられるでしょう。
最終的には事業の継続が困難になるケースも少なくありません。資金繰りが悪化し法的な問題が重なれば、最悪の場合は倒産に至ることもあります。
ファクタリングを利用する際には、二重譲渡を避けるための適切な手続きを行い、リスクを最小限に抑えることが重要です。
ファクタリングで罪に問われないようにするコツ
ファクタリングを利用する際には、二重譲渡を避けるためのいくつかの重要なポイントを押さえておくことが大切です。ここからは、ファクタリングで罪に問われないようにするコツを3つご紹介します。
審査基準を把握しておく
ファクタリングを利用する際には、各ファクタリング会社が設定している審査基準を理解しておきましょう。ファクタリングの審査は、売掛債権の信頼性や企業の財務状況を評価するために行われます。
これが二重譲渡のリスクを避けるための第一歩となります。
まず売掛債権の内容が明確であることが求められます。具体的には取引先の信用度や売掛金の回収可能性が審査のポイントとなります。取引先が信頼できる企業であることが確認できれば、ファクタリングの承認を得やすくなるでしょう。
次に企業の財務状況も重要な要素です。過去の決算書やキャッシュフローの状況が審査に影響を与えるため、これらの資料を整備しておくことが必要です。
特に安定した収益を上げている企業は、ファクタリングの審査において有利に働くことが多くなります。
さらにファクタリングを利用する際には、複数のファクタリング会社の審査基準を比較することも有効です。各社によって審査基準や条件が異なるため、自社に最も適したファクタリング会社を選ぶことでスムーズな資金調達が可能になります。
サポート体制が充実しているか確認する
ファクタリングを利用する際には、ファクタリング会社のサポート体制を十分に確認しましょう。特に、二重譲渡のリスクを避けるためには、信頼できるパートナーを選ぶことが不可欠です。
サポート体制が充実している会社は、顧客のニーズに応じた柔軟な対応が可能であり、万が一のトラブル時にも迅速に解決策を提供してくれます。
具体的には専門の担当者が常駐しているか、電話やメールでの問い合わせに対するレスポンスが早いかどうか、また、契約内容や手続きについての説明が丁寧で分かりやすいかなどが重要なポイントとなります。
さらに過去の利用者の口コミや評価も参考にすることが大切です。実際に利用した人の意見を聞くことで、その会社のサポート体制の実態を把握することができます。
信頼できるファクタリング会社を選ぶことで、二重譲渡のリスクを軽減し、安心して資金繰りを行うことができるでしょう。
必要な書類を過不足なく揃える
ファクタリングを利用する際は、必要な書類を過不足なく揃えることが大切です。書類が不十分であったり、誤った情報が含まれていたりすると、審査が通らないだけでなく二重譲渡のリスクを高める要因にもなりかねません。
ファクタリング会社は提出された書類を基に審査を行い、取引の信頼性を判断します。そのため、必要な書類を正確に準備することが、スムーズな取引を実現するための第一歩となります。
具体的には身分証明書や通帳のコピー、売掛金の証明資料、決算書や確定申告書、登記簿謄本、印鑑証明書、納税証明書などが必要です。
これらの書類は企業の信用力や財務状況を示す重要な情報源であり、ファクタリング会社がリスクを評価する際の基準となります。特に売掛金の証明資料は、実際に取引が行われていることを示すために欠かせない書類です。
また書類を揃える際には、最新のものを用意しましょう。古い情報や不正確なデータが含まれていると、審査に悪影響を及ぼす可能性があります。
ファクタリングの審査で必要な書類
ファクタリングを利用する際には、審査を通過するために必要な書類を準備することが重要です。これらの書類は、ファクタリング会社が企業の信用力や売掛金の実態を確認するために必要不可欠です。以下に、一般的に求められる書類を紹介します。
身分証明書
ファクタリングの審査において、身分証明書は非常に重要な書類となっています。一般的には、運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなどが身分証明書として認められています。
身分証明書を提出することで、ファクタリング会社は申請者の本人確認を行い、詐欺や不正利用を防ぐための重要なステップを踏むことができます。
この確認プロセスはファクタリングの信頼性を高めるだけでなく、企業自身の信用を守るためにも欠かせません。
また身分証明書は、ファクタリングの契約が成立した後も、必要に応じて再確認されることがあります。
特に契約内容に変更があった場合や、取引額が大きくなる場合には、再度の確認が求められることがあるため、常に最新の情報を提供できるようにしておきましょう。
通帳コピー
ファクタリングの審査においては、通帳のコピーも必要になります。通帳は、企業の資金の流れや取引の実態を確認することができるからです。
過去の入金履歴や出金状況を確認することにより、ファクタリング会社は企業がどの程度の売上を上げているのか、また、売掛金が実際に回収されているのかを確認します。
この時に売掛金の回収が滞っている場合はファクタリング会社がリスクを感じ、審査を通過しにくくなることもあります。
通帳のコピーは、企業の信用力を示す指標ともなります。安定した入金が続いている企業は、ファクタリングの利用においても信頼されやすく、より良い条件での契約が期待できるでしょう。
売掛金の証明資料
売掛金の証明資料は、ファクタリング会社が売掛金の存在を確認し、譲渡の正当性を判断するために必ず必要なものです。具体的には、請求書や取引先との契約書、納品書などが該当します。
請求書には取引先の名称、取引内容、金額、支払い期日などが明記されているため、ファクタリング会社はこれを基に売掛金の評価を行います。
また契約書は取引の条件や合意内容を示すものであり、売掛金の正当性を裏付ける重要な証拠となります。これらの資料が整っていない場合、ファクタリングの審査が通らない可能性が高まります。
売掛金の証明資料は、ファクタリングの利用において透明性を確保するためにも重要です。適切な書類を用意することで、ファクタリング会社との信頼関係を築き、スムーズな取引を実現することができるでしょう。
決算書・確定申告書
ファクタリングを利用する際には、決算書や確定申告書も必要です。これらの書類は、企業の財務状況や収益性を示す重要な資料であり、ファクタリング会社がリスクを評価するための基礎データとなるためです。
特に決算書は過去の業績を反映しているため、企業の信用力を判断する際に大きな役割を果たします。
決算書には貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書などが含まれ、これらを通じて企業の資産状況や利益の流れを把握することができます。
確定申告書は、税務署に提出するための書類であり、企業の収入や経費、納税額を明示するものです。これにより、ファクタリング会社は企業の実際の収益状況を確認し、信頼性を評価することができます。
登記簿謄本
登記簿謄本は、企業の基本情報や法人の状態を示す公式な文書であり、会社の設立日や所在地、役員情報などが記載されています。
登記簿謄本は企業の法的な存在を証明するものであり、ファクタリングを利用する際には必ず提出が求められます。
これにより、ファクタリング会社は企業が実在する法人であることを確認し、売掛債権の譲渡が適切に行われているかどうかを判断します。もし登記簿謄本に不備があったり、情報が古かったりする場合、審査が通らない可能性が高まります。
また登記簿謄本は定期的に更新されるため、最新の情報を反映させることが大切です。特に役員の変更や事業内容の変更があった場合は、速やかに登記内容を更新し、ファクタリングの審査に臨むことが求められます。
これにより二重譲渡のリスクを避け、安心してファクタリングを利用することができるでしょう。
印鑑証明書
印鑑証明書は、法人や個人が使用する印鑑が正式に登録されていることを証明するもので、契約や取引においてその印鑑の正当性を示す役割を果たします。ファクタリングを利用する際には、取引先やファクタリング会社に対して信頼性を示すために必要となります。
印鑑証明書は各市区町村の役所で取得することができます。申請手続きは比較的簡単で、本人確認書類や印鑑登録証を持参することでスムーズに取得できます。
また印鑑証明書は有効期限があるため、最新のものを用意するようにしましょう。ファクタリングを利用する際には、取引の信頼性を高めるために、常に最新の印鑑証明書を準備しておくことをおすすめします。
納税証明書
納税証明書は、企業が税金を適切に納付していることを証明するもので、ファクタリング会社が企業の信用力を評価する際の重要な指標となります。納税証明書が提出されることで、企業の財務状況や経営の健全性が確認され、信頼性が高まります。
納税証明書は、税務署から取得することができ、通常は法人税や消費税など、企業が納めるべき税金に関する情報が記載されています。
ファクタリングを利用する際には最新の納税証明書を用意することが求められるため、事前に税務署に申請し、必要な書類を整えておきましょう。
また、納税証明書がない場合や過去の納税状況に問題がある場合、ファクタリングの審査が通らない可能性が高くなります。
まとめ
本記事では、ファクタリングの二重譲渡がどのようにしてばれるのか、また、万が一ばれた場合の影響等について詳しく解説しました。さらに、罪に問われないための正しい利用方法や、ファクタリングの審査で必要な書類についても触れました。
ファクタリングを利用する際は、正しい知識を持ち、適切な手続きを踏むことが重要です。特に、審査基準を把握し必要な書類を過不足なく揃えることで、トラブルを未然に防ぐことができます。信頼できるファクタリング会社を選び、サポート体制が充実しているかを確認することも、安心して利用するためのポイントです。
企業の成長を支える資金調達手段として、ファクタリングを安全に利用しましょう。