ファクタリングは近年利用企業が増えている一方で、悪徳業者に遭遇するリスクや危険性もあります。また一般的な融資の金利と比較して、手数料は高いこともデメリットではあります。
ただしファクタリングにしか即日入金といったメリットもあるため、どのように判断すれば良いかわからないという方もいるかもしれません。今回はリスクや注意点を解説しながら、回避する方法について紹介していきます。
ファクタリングに潜む6つのリスクと注意点
ファクタリングは資金繰りを改善するための有用な手段である一方で、注意すべきリスクも存在します。以下では、ファクタリングに潜む6つの主要なリスクとそれに対する注意点を詳しく解説します。
手数料により本来得られる金額より目減りする
ファクタリングを利用する際は必ず手数料が発生します。この手数料は売掛債権の金額に応じて設定され、2社間ファクタリングでは5〜20%、3社間ファクタリングでは2~10%が相場とされています。
高額な手数料は売掛債権の本来得られる金額を大幅に目減りさせる原因となります。特に利益率が低い業種では、手数料負担が資金繰りにさらなる圧迫をもたらす可能性があります。
手数料率を事前に確認し、複数のファクタリング会社を比較することで、適切な条件で契約を結ぶことが重要です。
利用頻度が高いと自転車操業になってしまう
ファクタリングは短期的な資金調達に適しているものの、頻繁に利用すると利益が削られ、返済能力を圧迫する可能性があります。
ファクタリングが資金繰りの改善が根本的な対策にならない場合、長期的には自転車操業に陥るリスクが高くなってしまいます。
ファクタリングを一時的な解決策として利用し、並行して利益率の向上やコスト削減といった経営改善策を実施することが求められます。
償還請求権あり・買戻し特約など返済請求のケースがある
通常ファクタリングは償還請求権なし(ノンリコース)が一般的ですが、契約内容によっては償還請求権ありのケースがあります。
この場合は売掛先が倒産したり債務不履行に陥ったりすると、利用企業がファクタリング会社に返済を求められるリスクがあります。
特に買戻し特約が付帯された契約では、想定外の負担が発生する可能性があるため、契約時に細かい条項を確認し、リスクを理解しておくことが大切です。
このようなケースはどちらも融資契約に該当しますが、ファクタリング会社が貸金業登録を行っていることは少ないです。登録してない状態で融資契約を行うのは、違法行為なのでトラブルに巻き込まれる可能性があります。
3社間契約の場合は売掛先からの印象が悪くなる可能性がある
3社間ファクタリングは、売掛債権を譲渡する国際に売掛先(取引先)へ債権譲渡通知を送付し、承諾を得る必要がありま。
そのため売掛先である利用企業に、ファクタリングを利用している事実が知られることになります。 これが売掛先に対して「経営状態が悪いのではないか」「資金繰りに必要なのではないか」といった否定的な印象を与える可能性があります。
売掛先との取引関係が継続的であり、信頼関係を重視する場合には、このような印象を考えることは避けたいところです。ファクタリング利用による影響で、取引条件の見直し関係性の見通しを考えたりリスクも考えられます。
このようなリスクを最も大事にするためには、売掛先への内容通知や説明の仕方を慎重に計画することが重要です。
ファクタリング会社と事前に打ち合わせを行うため、売掛先への影響・売掛先と検討関係を強化し、ファクタリング利用が自社の健全な資金繰りの確保であることを理解してもらう努力も必要です。
悪徳業者・ヤミ金業者が存在している
ファクタリング業界には、正規の手続きで運営されている業者が多い一方で、悪徳業者やヤミ金業者が紛れ込んでいることもあります。このような業者を利用すると、不当な高額手数料や違法行為の被害を受けるリスクがあるため注意が必要です。
悪徳業者やヤミ金業者は、審査なしや即日入金を強調して利用者を引き寄せることがあります。これらの業者は、利用者が資金繰りに困っている心理につけ込み、非常に高い手数料や不透明な追加費用を請求する場合があります。
ま、契約内容を十分に説明しないまま契約を進めるケースもあり、契約後に利用者が不利な状況に陥ることがあります。
特にファクタリングを装った違法な貸付行為を行う業者には注意が必要です。例えば、契約書に「償還請求権あり」と記載されている場合、これは実質的に融資行為に該当します。
このような契約は、正規のファクタリング契約ではなく、法律違反となる可能性があります。
加えて取り立て方法が強引である場合も、悪徳業者である可能性が高いです。支払いが遅れた場合に執拗な電話や訪問、さらには売掛先や家族への嫌がらせを行うケースも報告されています。
利用企業が増えトラブル防止のため金融庁からも注意喚起が出ている
近年ファクタリングを利用する企業が増加している背景には、売掛金を迅速に現金化できる利便性や、借入ではないため貸借対照表に負債が計上されないメリットがあります。
しかしこの需要の増加に伴い、悪徳業者や違法行為を行う業者の存在が問題視されるようになりました。
金融庁はこのような状況を受け、トラブルの未然防止を目的とした注意喚起を行っています。特に、審査なしを謳い高額な手数料を請求する業者や、ファクタリングを装った違法な貸付行為を行うヤミ金業者について警戒するよう呼びかけています。
こうした業者は、利用者の資金繰りに困った状況につけ込み、法外な条件で契約を結ばせる場合があります。
また金融庁は公式サイトで悪質な業者の特徴を具体的に列挙し、企業が安全にファクタリングを利用できるよう情報提供を行っています。
例えば、「償還請求権あり」や「買戻し特約付き」といった契約条件が含まれる場合、それは実質的な融資とみなされ、法律に抵触する可能性があるため注意が必要です。
利用者がトラブルを避けるための具体的な対策も金融庁から提案されています。信頼性の高い業者を選ぶ際には、公式サイトに会社情報が詳細に記載されているか、登録番号や所在地が明確かどうかを確認することが推奨されています。
また、契約書の内容を細かく確認し、不明点があれば必ず業者に問い合わせることが重要です。
ファクタリングのリスクを回避する方法
ファクタリングは資金調達のスピードや負債計上を避けられる点で非常に便利な手法ですが、リスクを伴う場合があります。
そのため利用時には注意が必要です。以下に、ファクタリングのリスクを回避する具体的な方法を解説します。
手数料を安くするなら債権譲渡登記ありの会社を選ぶ
ファクタリング会社に支払う手数料は、契約条件や審査の内容に大きく左右されます。特に債権譲渡登記を行うファクタリング会社は、法律的に売掛金の権利をしっかりと確保するため、リスクが低くなります。
利用者に課される手数料も比較的低めに設定されることが多いです。
ただし債権譲渡登記を行う場合、契約時に登記費用が別途必要になる点に注意が必要です。また登記は法務局に平日に行く必要があるため、日中が忙しい方にとってはデメリットとなります。
手数料と手間のバランスを考慮したうえで、どのような契約にするかを決めるのが良いでしょう。
経営が安定している売掛金の請求書を売却すれば手数料は低め
ファクタリング会社がリスクを評価する際、売掛先の経営状態は非常に重要な要素となります。売掛先が安定しており、支払い遅延や倒産のリスクが低い場合、ファクタリング会社も安心して取引ができるため、手数料を低く設定する傾向にあります。
そのため可能な限り経営が健全で取引履歴のある売掛先の請求書を売却することが推奨されます。極端な話をすれば大手企業や上場企業・公共団体が売掛先であれば、倒産して貸し倒れになるリスクは非常に低くなります。
このような健全な企業であればファクタリング審査も通過しやすく、より好条件の手数料が提示されるでしょう。
償還請求権なしのファクタリング会社と契約する
ファクタリングには「償還請求権なし(ノンリコース)」と「償還請求権あり」の2つの契約形式があります。償還請求権なしの契約では売掛先が倒産して支払い不能となった場合でも、利用者がファクタリング会社に返済する義務を負いません。
この仕組みは売掛債権を売却した時点でリスクをファクタリング会社が引き受けるため、利用者にとって安心できる条件です。
一方で償還請求権ありの契約では、売掛先が支払い不能になると、利用者が債権を買い戻す義務を負います。
この場合はファクタリング契約で得た資金以上の支払いを求められる可能性があり、リスクが高くなります。そのため契約を結ぶ際は必ず契約内容を確認し、ノンリコースであることを確認することが重要です。
また契約書に「償還請求権」や「買戻し特約」の記載がないか注意深く確認しましょう。不明な点がある場合は、弁護士や専門家に相談することでリスクを回避できます。
悪徳業者・ヤミ金業者の特徴を把握しておく
ファクタリング業界には、正規の業者だけでなく悪徳業者や違法なヤミ金業者が存在する場合があります。これらの業者と契約すると高額な手数料や不当な取り立てに悩まされるリスクがあります。そのため、悪徳業者の特徴を把握しておくことが重要です。
悪徳業者の特徴の一つは「審査なし」を強調する広告です。審査なしという条件は一見魅力的に見えますが、通常はリスクを上乗せした法外な手数料が設定されることが多いため注意が必要です。
また契約書に償還請求権や買戻し特約が含まれている場合も、利用者に大きな負担が生じる可能性があります。
また公式サイトに固定電話番号や住所・代表者名などの基本情報を記載していない業者も危険です。信頼できる業者は透明性が高く、これらの情報を公開しています。
加えて口コミサイトや評判の調査も重要なポイントです。口コミに悪質な対応やトラブルの報告が多い場合、その業者を避けるべきです。
ファクタリングはリスクだけでなくメリットも多い
ファクタリングは資金調達方法として、リスクだけでなく多くのメリットを持つ仕組みです。特に資金繰りが厳しい企業や即時の現金が必要な場合には、有力な選択肢となります。
最短即日でスピーディーに資金調達できる
ファクタリングの大きな特徴の一つは、資金調達のスピードです。従来の銀行融資では審査や契約手続きに数週間から数ヶ月かかることが一般的ですが、ファクタリングでは最短で即日入金が可能です。
これはファクタリングが企業の信用力ではなく、売掛債権の信用力を重視するため、審査が迅速に行われるからです。
例えば急な支払いが発生したり、突発的な資金不足が生じた場合でも、ファクタリングを利用することで迅速に対応できます。
このスピーディーさは特に中小企業や個人事業主にとって大きなメリットです。また、短期間での資金調達が可能なため、事業拡大や緊急対応にも柔軟に対応できます。
30万円未満など少額でも資金調達できる
ファクタリングは大規模な資金調達だけでなく、30万円未満といった少額の資金調達にも対応できる点が特徴です。従来の銀行融資では少額の融資はコスト面や手続き上の理由から断られることが多いですが、ファクタリングはこうした小口の資金調達にも柔軟に対応します。
特に中小企業や個人事業主にとっては、急な支払い対応や小規模な運転資金が必要になる場面が少なくありません。例えば、急な仕入れ資金の補填や給与支払いなど、少額の資金不足が事業運営に大きな影響を与えることがあります。
ファクタリングを利用することで、こうした緊急の資金需要にも迅速に対応可能です。
少額のファクタリングは手続きが簡単で、必要な書類も最低限で済むことが多いです。請求書や通帳のコピーといった基本的な書類を提出するだけで、数日以内に資金調達が完了する場合もあります。
特にオンライン完結型のファクタリングサービスでは、より手軽に利用できる点が魅力です。
また少額ファクタリングは、初めてファクタリングを利用する企業にとっても試しやすい選択肢です。大規模な取引に進む前に、少額の取引でサービスの利便性や信頼性を確認することができ、リスクを最小限に抑えられます。
自社の信用情報に悪い影響が出ない
ファクタリングは売掛債権を売却する形式の資金調達であるため、借入には該当しません。これにより、貸借対照表には負債として記載されず、自社の信用情報に悪影響を与えません。特に、銀行融資や他の借入を検討している場合に、信用情報の健全性を保つことが重要です。
また、ファクタリングでは売掛先の信用力が審査の中心となるため、赤字決算や債務超過の企業でも利用できる可能性があります。この特徴は、一般的な融資審査のハードルが高い企業にとって大きな助けとなります。さらに、信用情報に傷がつかないことは、将来の融資審査にも有利に働く点が魅力です。
このように、ファクタリングはリスク管理をしながら、スピーディーで柔軟な資金調達が可能であり、信用情報を保護する効果も期待できるため、特に資金繰りに課題を抱える企業にとって、有効な選択肢と言えます。
負債にならず資金調達が可能
ファクタリングの最大の特徴の一つは、負債として扱われない点です。銀行融資の場合、借入金は貸借対照表に負債として記載され、自己資本比率が低下することがあります。
一方でファクタリングは売掛金の売却という形で資金を調達するため、貸借対照表には影響を与えず、負債を増やすことなく資金調達が可能です。この仕組みは、企業の信用格付けや財務状態を維持したい場合に非常に有効です。
融資審査よりも審査が甘い傾向にある
ファクタリングの審査では、売掛先の信用力が重視されます。つまり、利用する企業自身の財務状況や信用情報が厳しく問われることは少なく、赤字決算や債務超過の企業でも利用できる可能性が高いということです。
一方で銀行融資の場合は申込み企業自身の財務状況が重要視され、審査が厳しくなる傾向があります。そのため、ファクタリングは迅速に資金調達を行いたい企業にとって有効な選択肢です。
必要書類も3つ程度と手間が少ない
ファクタリングの手続きに必要な書類は、一般的に請求書・通帳コピー・本人確認書類の3つ程度で問題ありません。
これにより銀行融資のように複雑な書類準備や膨大な手続きが不要です。またオンライン完結型のファクタリング会社を利用すれば、これらの書類をデータで提出するだけで手続きが完了することも多いです。
このように必要書類が少なく手間がかからない点は、忙しい中小企業や個人事業主にとって大きなメリットとなります。