ファクタリングの複数譲渡について調べているということは、併用を検討しているか・二重譲渡にならないかを調査していることでしょう。
結論からお伝えすると二重譲渡はバレて、犯罪として刑事罰の対象になります。
今回は複数譲渡の内容について解説していきます。
ファクタリングの複数譲渡には2つの意味合いがある|違法性と安全性を解説
ファクタリングを利用する際に注意が必要な用語として、「複数譲渡」があります。
この「複数譲渡」には2つの意味合いがあり、それぞれの性質や法律的な問題について正しく理解することが重要です。
まずは具体的に2つの意味合いについて詳しく解説します。
同一の売掛債権を複数社に売却=二重譲渡(違法)
同一の売掛債権を2社以上のファクタリング会社に売却することを「二重譲渡」と呼びます。
この二重譲渡は明らかに違法行為であり、絶対に行ってはいけません。
なぜ二重譲渡が違法になるかというと、同じ売掛金(債権)を複数社に譲渡すると、当然ながら1つの売掛金を複数の会社が所有している状態になり、実際に資金を回収する段階で混乱が生じます。
その結果、債権の真正性が疑われ、「詐欺罪」や「横領罪」などの刑事罰の対象となる可能性があります。
具体的には、二重譲渡がバレるのは次のようなケースです。
- 債権譲渡登記による発覚
債権譲渡登記を行っている場合、法務局に記録が残り、複数のファクタリング会社が同じ債権を登記すると即座に発覚します。
- 売掛先への請求時の発覚
ファクタリング会社が売掛先に債権を請求する際、同一の債権に対して複数の請求が届くことで必ず不審に思われ、売掛先から調査されます。
このような二重譲渡が発覚すれば、次のような重大な法的リスクにさらされます。
- 詐欺罪による刑事告訴(10年以下の懲役)
- 横領罪による刑事告訴(5年以下の懲役)
- 企業の信用喪失・取引停止など経営に深刻な影響
二重譲渡は、ファクタリング業界において最も避けるべき行為であることを強く認識しておきましょう。
異なる売掛債権を複数社に売却=全く問題なし(合法)
一方で、異なる売掛債権をそれぞれ別々のファクタリング会社に譲渡することは、何の問題もありません。むしろ健全で一般的な資金調達方法です。
例えば、
- A社からの売掛債権を「Xファクタリング会社」に売却
- B社からの売掛債権を「Yファクタリング会社」に売却
といったように、売掛先ごとに有利な条件の会社を選ぶことは合法かつ非常に効果的です。
この場合は、各ファクタリング会社間で情報共有が行われることもなく、他社利用が発覚するリスクはありません。
また、複数社を使い分けることで、より良い手数料条件や対応スピードの会社を選択でき、資金調達の効率化にもつながります。
異なる売掛債権であれば、いくら複数社を併用しても法的にも問題なく、むしろ資金繰りの改善に役立つ場合が多いのです。
ファクタリングの複数譲渡(二重譲渡)がバレるケース
ファクタリングは売掛債権を早期に現金化できる便利な資金調達手段ですが、同一の売掛債権を複数の会社に売却する「二重譲渡」は違法行為となり、重大なトラブルにつながります。
実際、二重譲渡はどのようなタイミングで発覚するのか、主なケースについて解説します。
見積もりを取る時に債権譲渡登記が理由でバレる
二重譲渡がもっとも早い段階で発覚するのは、ファクタリング会社が見積もりを取る際です。
多くのファクタリング会社では審査時に「債権譲渡登記の確認」を行います。法務局の登記簿をチェックすると、その売掛債権がすでに他の会社に譲渡されているかが即座に判明します。
債権譲渡登記がされている売掛債権を別の会社に見積もり依頼すると、登記簿謄本に前回の譲渡履歴が記載されているため、審査段階で二重譲渡の疑いが生じます。
この時点でファクタリング会社は警戒し、審査落ちの可能性が極めて高くなります。
また、二重譲渡が疑われると今後の取引自体を拒否される可能性もあるため、最初の段階で発覚するリスクが高いことを認識しておきましょう。
契約時にも債権譲渡登記が理由でバレる
仮に見積もり段階で発覚しなかったとしても、実際の契約時には必ず再度債権譲渡登記を確認されます。
契約段階で債権譲渡登記をファクタリング会社が行う際、すでに登記がなされていることが分かれば、契約直前で二重譲渡が発覚します。
こうなると、ファクタリング会社は契約を中止し、悪質なケースでは通報や刑事告訴に発展する恐れもあります。
契約段階で二重譲渡が発覚した場合、単に取引がキャンセルされるだけでなく、信用情報に深刻な傷がつく恐れもあります。
契約段階で発覚するということは、その時点で信頼を失うだけでなく、法的リスクも伴うため極めて危険です。
売掛先への請求時にバレる
二重譲渡が必ず発覚するもう一つのタイミングが「売掛先への請求時」です。
2つのファクタリング会社が同一の売掛債権を買い取っている場合、当然売掛先へは二重の請求が発生します。
売掛先は複数の会社から同じ請求を受けるため、即座に異常事態に気づきます。
すると売掛先企業は、どちらの請求が正当かを確認するために債権の所有状況を調査します。
そこで二重譲渡が明らかになり、最終的には詐欺行為として警察や法的措置をとる可能性があります。
特に2社間ファクタリングの場合、「売掛先に知られないから大丈夫」と軽く考える人もいますが、最終的に入金期日に売掛先に請求が行われるため、必ず二重譲渡はバレます。
内部告発や第三者の通報でバレる可能性もある
稀なケースですが、社内の経理担当者や従業員が二重譲渡に気づき、通報するというパターンもあります。
これは日頃から取引や債権管理をしている経理担当者であれば異変に気づきやすいためです。
内部からの通報や告発があれば、行政機関や警察の介入を招きやすく、より深刻な事態に発展します。
ファクタリングの複数譲渡(二重譲渡)がバレるとどうなるのか?
ファクタリングで同一の売掛債権を複数の会社に譲渡する「二重譲渡」は絶対にしてはいけない違法行為です。
では、実際に二重譲渡を行ってしまい、それが発覚した場合、どのような事態になるのでしょうか?具体的なリスクや影響について詳しく解説します。
請求書は1枚なので支払い不能になる
ファクタリングの仕組み上、売掛債権を譲渡すると、ファクタリング会社が売掛先に対して請求権を持つことになります。
同一の売掛金を複数のファクタリング会社に譲渡した場合、1枚の請求書に対して複数の会社が権利を主張します。しかし、売掛先が実際に支払う金額は1回分しかありません。
つまり、2社以上のファクタリング会社が売掛先に請求をかけると、売掛先は「どの会社に支払えばいいかわからない」という混乱が生じます。
その結果、売掛先は支払いを一旦停止し、状況を確認することになります。これにより、資金の回収ができず「支払い不能」の状態に陥ります。
支払いができず取引先との信用がなくなる
支払いが行われない状況になると、売掛先に対しても調査が実施されることになるでしょう。
売掛先は経営状態に全く問題がないとなると、支払ったのになぜ調査されているのか?といった事態になります。
こうなると不正な資金調達を行ったとして、取引先からも信用がなくなり、取引は停止になることになるでしょう。
詐欺罪や横領罪などの刑事責任に問われる
二重譲渡は明確な違法行為であり、単なる債務不履行とは異なり、犯罪行為として扱われる可能性があります。
- 詐欺罪
同じ売掛債権を複数の会社に譲渡することは、「欺罔(ぎもう)」という行為に該当し、「10年以下の懲役」という非常に重い刑罰が課される可能性があります。 - 横領罪
債権を二重譲渡して現金を得る行為は、法律上、自社資産の不法処分に該当し、横領罪(5年以下の懲役)の対象にもなります。
実際、ファクタリング業界でも二重譲渡が原因で逮捕され、法的責任を負ったケースがあります。
逮捕されると、個人としての信用も完全に失い、社会的にも非常に厳しい状況に陥ります。
信頼を失い事業継続ができなくなる
支払える資金もなく、売掛先からの信用がなくなると資金繰りは悪化する状態になります。
一度悪い情報がでてしまうと、与信調査の段階で取引を断られることになり、事業継続はできない状況となるでしょう。
信用情報が悪化し今後の資金調達が困難になる
ファクタリング自体は信用情報機関の照会をしませんが、二重譲渡が発覚し、刑事責任に問われるなど大きな問題になると、その情報は業界内で共有されます。
また、取引先や銀行・金融機関にも情報が伝わり、企業としての信用力が大幅に低下します。
一度信用が失墜すると
- 銀行融資が受けられなくなる
- 他のファクタリング会社や資金調達手段も使えなくなる
- 取引先が契約を避けるようになる
など、今後の資金調達に極めて深刻な悪影響を及ぼします。
ファクタリングの複数譲渡に関するまとめ|違法と合法の違いを理解し安全に活用する
ファクタリングの利用において「複数譲渡」という言葉は混同しやすく、正しい意味を理解していないと重大なリスクを伴います。ここでは、ファクタリングの複数譲渡について要点をまとめ、具体的な注意点と安全な利用方法を解説します。
複数譲渡の2つの意味を理解する
ファクタリングにおける「複数譲渡」は、以下の2つの意味があります。
譲渡の種類 | 内容 | 違法性 |
---|---|---|
同一の売掛債権を複数社に売却(二重譲渡) | 違法(犯罪行為) | 絶対禁止 |
異なる売掛債権を複数社に売却 | 合法(問題なし) | 利用可能 |
同一の売掛金を2社以上に譲渡する行為(二重譲渡)は絶対に禁止ですが、異なる売掛債権をそれぞれ別の会社に譲渡することは法律的にも全く問題なく、むしろ一般的で安全な資金調達手段です。
二重譲渡は絶対にしてはいけない
同じ売掛債権を複数社に売却(二重譲渡)することは絶対に行ってはいけません。もし二重譲渡が発覚した場合、次のような深刻なリスクがあります。
- 支払い不能に陥る
1枚の請求書に複数のファクタリング会社が請求を行い、売掛先が支払いをストップする可能性があります。 - 取引先との信用喪失
同じ債権に複数の請求が届くため、売掛先が混乱し、取引停止などの深刻な事態に陥ります。 - 詐欺罪や横領罪による刑事罰
二重譲渡は明確な犯罪行為であり、刑事告訴により「詐欺罪(10年以下の懲役)」や「横領罪(5年以下の懲役)」に問われる可能性があります。 - 今後の事業継続が困難になる
企業としての信用が失墜し、銀行融資や他の資金調達手段も利用できなくなります。
複数社利用時の注意点・ポイント
ファクタリングの複数社利用自体は合法的で効果的ですが、安全に利用するために、以下の注意点をしっかり押さえておきましょう。
- 必ず異なる売掛債権をそれぞれの会社に譲渡すること
- 債権譲渡登記がある場合は事前に登記簿を確認すること
- 二重譲渡を避けるため、売掛金ごとに明確に区別すること
- ファクタリング会社間では情報共有がないため複数社利用は基本的にバレないが、二重譲渡だけは必ずバレる