2社間と3社間ファクタリング4つの違い
ファクタリング契約には大きくわけて2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの2種類がありますが、それぞれどのような違いがあるのでしょうか。
中小企業ではファクタリングの利用も徐々に浸透してきていますが、大きな違いは売掛先が関与するかどうかが、2社間・3社間の違いです。
今回は2社間・3社間ファクタリングの違いやそれぞれのメリット・デメリットについて解説しながら、使い分けについて解説していきます。
2社間ファクタリングの詳細についてはこちらの記事で解説しています。
3社間ファクタリングの詳細についてはこちらの記事で解説しています。
契約形態 | 2社間ファクタリング | 3社間ファクタリング |
売掛先の通知・承諾 | なし | あり |
債権譲渡登記 | あり | なし |
手数料 | 4〜18% | 1〜9% |
現金化までのスピード | 早い:最短即日 | 遅い:10〜15日前後 |
(1)売掛先への通知と承諾の有無
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの大きな違いは、売掛先へのファクタリング利用することを伝えるかどうかです。
- 2社間ファクタリング:売掛先への通知を行わない
- 3社間ファクタリング:売掛先への通知・承諾を行う
2社間ファクタリングでは債権譲渡する内容を通知することはないため、承諾を得る必要もないです。しかし3社間ファクタリングは売掛先への債権譲渡通知・承諾を得る必要があります。
3社間ファクタリングで売掛先に通知を行う理由としては、債権譲渡を行なっているため、売掛先が誰に対して売掛金を支払らえば良いか分からなくなるためです。
債権譲渡した旨を通知しておくことで、新しい債権者であるファクタリング会社は、正当に権利があることを主張・証明できるようになります。
このように3社間ファクタリングは売掛先に通知・承諾を行うため、債権の未回収リスクが下がるため、比較的手数料は低く設定されえていることが多いです。
(2)債権譲渡登記の有無
2社間ファクタリングの場合は売掛債権の譲渡通知・承諾を省略し、下記のような流れになっています。
- 旧債権者であるファクタリング利用企業が従来通りに売掛先が入金
- 入金された売掛金を、ファクタリング利用企業が、ファクタリング会社に引き渡す
3社間ファクタリングの場合は売掛先に対して債権譲渡の通知・承諾を得ることで、ファクタリング会社が正当な権利者であることを主張ができますが、2社間ファクタリングではこれができません。
そのため2社間ファクタリングでは売掛金をファクタリング利用企業が一時的に回収し、その後ファクタリング会社に引き渡すという流れになり、持ち逃げや他の用途に回収した資金を流用する可能性があります。
そうなるとファクタリング会社は損害を被ることになるため、2社間ファクタリングの契約時には債権譲渡の登記が求めらます。債権譲渡登記とは保有している資産が譲渡されたことを公示する登記制度です。
債権譲渡登記を行なったとしても、ファクタリング会社が売掛先に権利を主張することはできませんが、権利を主張する第三者への抵抗要件となるのです。
債権譲渡登記は法人企業に限定されるため、個人事業主は実質的に審査申込ができなくなります。
ただし個人事業主やフリーランス向けに特化したファクタリング会社もあるため、個人事業主でも審査が緩いファクタリング会社の記事を参考にしてみてください。
ペイトナーファクタリングでは個人事業主やフリーランスの利用も可能で、売掛先が個人であっても対応してくれます。またビートレーディングではオンライン完結型のファクタリングで、個人事業主の利用も可能です。加えて審査通過率は98%のため必要書類も少なく済みます。
また債権譲渡登記は契約時に二重譲渡を防止する目的でも利用されます。仮に二重譲渡が起きたとしても、自社が権利者であることを主張ができるようになります。
3社間ファクタリングの場合は売掛先から合意を得ることで、この要件を満たすことができます。
(3)手数料負担の違い・相場を比較
ファクタリングを利用する場合は必ずファクタリング会社に手数料を支払うことになりますが、2社間ファクタリングと比較すると、3社間ファクタリングの方が手数料は低めに設定されています。
- 3社間ファクタリングの手数料:1〜9%
- 2社間ファクタリングの手数料:4〜18%
上述でも触れたように3社間ファクタリングの方が、ファクタリング会社からすると売掛債権の未回収リスクが低いのが理由です。2社間ファクタリングで債権譲渡登記を行う場合は、二重譲渡などのリスクを防止できるため、手数料が下がる可能性はあるかもしれません。
ただし登記にかかる登録免許税や司法書士に対する報酬は、ファクタリング利用者が負担する必要があります。そのため手数料が下がってもあまり効果が薄いといえます。
2社間ファクタリングを利用する場合は、債権譲渡登記が不要なファクタリング会社の方がコストは抑えて契約ができる可能性が高くなります。
(4)現金化までのスピードの違い
2社間ファクタリングでは売掛先に債権譲渡通知や承諾を得る必要はないため、現金化・資金調達のスピードは3社間ファクタリングよりも、圧倒的に早いのが特徴です。現金化までの目安は下記の通りです。
- 3社間ファクタリングの入金スピード:10〜15日前後・長いと30日程度
- 2社間ファクタリングの入金スピード:最短即日入金・2〜4日程度
最近では契約自体を電子契約で行い、面談などもオンライン・もしくは面談も不要といったオンライン完結型ファクタリングも登場しています。そのため審査に通過すれば最短で即日入金、中には2時間のスピード入金といったファクタリング会社もあります。
ただし債権譲渡登記を求められた場合は登記所は東京法務局となるため、都心部以外にある企業の場合は時間が発生する点が注意点です。
2社間ファクタリングののメリット・デメリット
次は2社間ファクタリングに関する具体的なメリットやデメリットについて解説していきます。
2社間ファクタリングの手数料やメリット・違法性など詳細はこちらの記事で解説しています。
メリット1:最短即日入金でスピーディーに資金調達が可能
解説してきように2社間ファクタリングのメリットは、売掛先に債権譲渡通知・承諾を得る必要がないため、スピーディーに資金調達・現金化ができるという点です。
3社間ファクタリングの場合は売掛先への事前説明・承諾書の回収が必要となるため、売掛先の協力が弱いと資金調達までに時間がかかってしまいます。
一方で2社間ファクタリングの場合は申込を行い、必要書類を提出すれば最短2時間・即日入金といったようにスピード感をもって現金化ができます。
メリット2:償還請求権がない
また2社間ファクタリングには償還請求権がないのもメリットです。償還請求権とは債務の責任範囲を限定せず、金銭債権などを全額請求できる権利のことです。
そのため通常のファクタリング会社では売掛先が仮に倒産しても、利用者が責任を負うことはありません。
ただし審査のないファクタリング会社などでは、償還請求権が発生する悪質な業者もあります。日本で健全な運営をしているファクタリング会社では、基本的には償還請求権は発生しません。
契約内容を見た時に償還請求権が発生すると記載がある場合は、危険なファクタリング会社の可能性が高いため注意しましょう。審査なしのファクタリング会社をおすすめしない理由についてはこちらの記事で解説しています。
メリット3:売掛先にファクタリングの利用を知られない
これも上述触れた内容と重複しますが、2社間ファクタリングでは売掛先にファクタリング利用について知られることはないです。3社間ファクタリングの場合は売掛先から承諾を得て契約を締結行いますが、2社間ファクタリングは利用者とファクタリング会社間での契約です。
ファクタリング利用することで経営状態が悪いのでは?業績が悪化しているのではないか?といった悪い評判が出回ると、取引がストップしてしまう可能性もあります。
そのため取引先にネガティブな印象を持たれたくない、売掛先に不安や心配をかけたくない場合にも2社間ファクタリングはおすすめです。
メリット4:自社の信用力に自信がなくても利用が可能
基本的にファクタリングの審査では、2社間・3社間ともに利用者でなく、売掛先の信用力が重視されます。ファクタリングの審査基準についてはこちらの記事で解説しています。
そのため自社の信用力に自信がなくても、信用力の高い売掛先の売掛債権であれば売却し、資金調達ができます。
デメリット1:3社間ファクタリングよりも手数料が高め
1つ目のデメリットとしては3社間ファクタリングと比較した時に、2社間ファクタリングは手数料がやや高めに設定されているという点です。それぞれの手数料相場は下記のようになると言われています。
- 3社間ファクタリングの手数料:1〜9%
- 2社間ファクタリングの手数料:4〜18%
この理由は取引形態の特徴にあります。ファクタリング会社の視点で考えると、売掛先企業に直接売掛金の存在を確認できるため、3社間ファクタリングの方が未回収リスクは低いと判断できます。リスクが低い分、手数料を抑えることができます。
また2社間ファクタリングの場合は利用者自身が売掛金の回収を行うため、回収した売掛金を別の用途にしようされたり、持ち逃げされるといったリスクがあるのも理由です。
デメリット2:審査が比較的厳しいことが多い
3社間ファクタリングと比較して2社間ファクタリングは審査が厳しい傾向にあると言われています。
3社間ファクタリングでは売掛先とも契約を行うため二重譲渡や架空債権のリスクを心配する必要はないです。しかし2社間ファクタリングの場合は、売掛先からの債権確認はできないため、申込者からの資料で判断することしかできません。
架空債権や二重譲渡など売掛金に関するリスクが高くなるため、2社間ファクタリングでは必要書類が多かったり、売掛先の存在や取引実態が証明できないと審査に落ちやすくなります。
ファクタリング審査の基準や審査落ちの理由と対策については、それぞれの記事で解説しています。
デメリット3:売掛金をファクタリング会社に渡す必要がある
3社間ファクタリングの場合は債権譲渡により権利がファクタリング会社に移っているため、売掛先から売掛金の入金はファクタリング会社の口座に振り込まれます。
2社間ファクタリングの場合は売掛先から入金されたら、ファクタリング会社の指定した口座に振り込む必要があります。大きな手間ではありませんが、忘れないようにしましょう。
仮に売掛金が入金されて他の用途に利用してしまい、ファクタリング会社への支払いが大きく遅延すると、その会社では利用ができなくなる可能性もあるため入金もれには注意しましょう。
デメリット4:個人事業主やフリーランスは利用できないことがある
これは先ほどふれた債権譲渡登記と関係してくる内容ですが、債権譲渡登記は法人企業を対象にしているため、個人事業主やフリーランスの方は2社間ファクタリングを利用できないケースもあります。
2社間ファクタリングでは売掛先に通知や承諾を取らないため、二重譲渡や架空請求が発生するリスクがあります。そうしたリスクを抑えるのが債権譲渡登記です。
ただし中には個人事業主やフリーランスでも利用できるファクタリング会社もあるため、詳細はリンクから参照してください。個人事業主やフリーランスでも利用できる2社間ファクタリング会社は下記の通りです。
3社間ファクタリングのメリット・デメリット
次は3社間ファクタリングのメリットやデメリットについて解説していきます。
3社間ファクタリングのメリットやデメリット・流れ・おすすめ会社についてはこちらの記事で紹介しています。
メリット1:手数料が2社間ファクタリングよりも低くなるケースが多い
3社間ファクタリグの1つ目のメリットは、2社間ファクタリングよりも手数料が安くなるという点で、これが最大の利点といえます。下記は2社間・3社間ファクタリングの手数料目安です。
- 3社間ファクタリングの手数料:1〜9%
- 2社間ファクタリングの手数料:4〜18%
ファクタリング会社からすると売掛先企業に債権が存在することを直接確認できるため、3社間ファクタリングは架空請求や二重譲渡契約のリスクが下がり手数料を安く抑えることができます。
仮に100万円の売掛金でファクタリングを実施したと仮定すると、下記のような試算結果になります。
契約形態 | 売掛金額 | 手数料金額 | 得られる現金 |
2社間ファクタリング | 100万円 | 4〜12万円 | 88〜96万円 |
3社間ファクタリング | 100万円 | 2〜9万円 | 91〜98万円 |
金額が大きくなるほど手元に残る金額は少なくなるため、なるべく得られる現金を残したい場合は、3社間ファクタリングの方がおすすめです。
メリット2:2社間で審査落ちしても3社間なら審査通過のケースもある
紹介してきたように2社間ファクタリングでは、ファクタリング利用企業から売掛金の回収を行います。申込企業の資金状態が切迫している・経営状態が悪い場合は、売掛金の回収ができないリスクがあります。
加えて債権譲渡登記を行わない場合は、二重譲渡や架空請求といったようにファクタリング会社としてはいくつかのリスクを負うことになります。
このようなリスクがあるため、2社間ファクタリングでは審査が厳しいのが一般的です。ただし2社間ファクタリングで審査落ちになった場合でも、3社間ファクタリングであれば審査に通過できる可能性もあります。
売掛先企業との債権譲渡に関する調整がつきそうなのでれば、3社間ファクタリングも検討するのが良いでしょう。
デメリット1:資金化・現金化までに時間がかかる
これまで3社間ファクタリングの仕組みについて解説してきましたが、売掛先企業に債権譲渡通知・承諾を得るのが一般的です。売掛先への債権譲渡通知や承諾が不要な2社間ファクタリングと比べると、売掛先企業との調整が必要となるため、資金調達までに時間がかかる傾向にあります。
3社間ファクタリングの利用検討をする場合は、余裕をもってファクタリング会社への相談・契約を進めるのがおすすめです。また資金調達までにある程度の時間がかかっても問題ないという場合は、手数料も安いため3社間ファクタリング良いしょう。
デメリット2:売掛先にファクタリング利用を知られてしまう
紹介したように3社間ファクタリングでは売掛先に債権譲渡の通知・承諾を行います。そのため基本的に売掛先にファクタリング利用については、知られてしまうという認識をしておきましょう。
ファクタリングの利用自体は法的にはなんの問題もありませんが、取引先によっては経営が悪化しているのでは?資金繰りが良くないのでは?といった懸念を持ち、その後の取引に影響が出る可能性もあります。
悪い噂が流れると場合によっては支払いサイトを短くされたり、仕入れ先の取引中断・進行中の受注がストップするといったこともあるかもしれません。
そのため3社間ファクタリングを行う場合は関係性が良好な取引先を選ぶ、ファクタリング会社とも事前に相談して慎重に売掛先企業との調整を行うようにしましょう。
2社間と3社間ファクタリングの使い分けを解説
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングにはそれぞれにメリットやデメリットがあることを解説してきました。最後はどちらを利用するの迷った時の、おすすめの使い分け方法について紹介していきます。
売掛先にファクタリングを知られたくない場合
中小企業の多くは3社間ファクタリングよりも2社間ファクタリングを利用することが多いと言われています。理由としてはファクタリング利用で、売掛先に知られてしまうという点です。
ファクタリング利用を知られることで、それ以降の取引に影響が出ることを懸念する経営者も少なくないでしょう。ただし長い付き合いがあり、関係性や信頼関係も構築できている場合は、3社間ファクタリングを選んでも良いでしょう。
売掛先にファクタリング利用について知られたくない場合は2社間ファクタリングを選択し、知られても問題ない場合は3社間ファクタリングという使い分けがおすすめです。
手数料を安く抑えたい
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングでは手数料相場は異なります。
- 3社間ファクタリングの手数料:1〜9%
- 2社間ファクタリングの手数料:4〜18%
上記で解説したように3社間ファクタリングは、未回収リスクが下がるため手数料は低めに設定されているのが一般的です。資金調達に関するコストを抑えたい場合は、3社間ファクタリングを選ぶのが良いでしょう。
スピーディーに現金化・資金調達をしたい
3社間ファクタリングは債権譲渡通知・承諾が必要になるため、現金化までに時間がかかります。しかし2社間ファクタリングの場合は、最短2時間・即日入金といったように圧倒的にスピードが早いです。
- 2社間ファクタリング:最短即日・2〜4日程度
- 3社間ファクタリング:10〜15日前後・長いと30日程度
運転資金として急ぎでお金が必要な場合は、2社間ファクタリングの利用がおすすめです。
売掛先が民間企業ではない場合
3社間ファクタリングを利用する場合は売掛先に知られてしまうというリスクを許容できる際に選ぶのが無難です。しかし一般的な民間企業の場合は認めてもらえるとも限りません。
ただし売掛先が官公庁や地方公共団体など国が運営している場合は、ファクタリングによる悪評・風評被害などを心配せずに3社間ファクタリングを利用できるでしょう。
例えば下記のような場合が該当します。
- 医療機関の診療報酬や介護事業者の介護報酬などの債権
- 国や都道府県から依頼され行った入札工事の請負による債権
- 許認可を受けるときに預け入れた供託金などの債権
国や地方公共団体が破綻する可能性はかなり低いため、売掛金の未回収リスクは限りなくゼロに近いです。そのためファクタリング会社にとってもリスクが低いため、手数料を抑えて利用ができるでしょう。