ファクタリングに限らず金融機関で担保提供をする場合などは、掛け目という言葉が登場します。ファクタリングにおける掛け目とは簡単にいうと売掛債権の評価に対する、買取率のことです。
今回はファクタリングの掛け目について解説しながら、お金の流れや仕組みについて紹介していきます。
ファクタリングの掛け目とは?
ファクタリングの「掛け目」とは売掛債権の買取率を指し、ファクタリング会社が売掛金を現金化する際に適用する割合のことです。
たとえば売掛金が100万円で掛け目が90%であれば、90万円が買取金額となり残りの10万円はリスク回避のため差し引かれます。
この掛け目はファクタリング会社が売掛債権の回収に伴うリスクを抑えるための重要な仕組みです。
掛け目は売掛債権の買取率
掛け目は売掛債権の買取率として算出され、一般的には80%から95%程度に設定されることが多いです。買取率が高いほど、ファクタリング利用者にとって有利な条件となります。
ただし掛け目の具体的な設定は売掛先の信用力や経営状態・売掛債権の信頼性に依存します。経営が安定している上場企業や大手企業であれば、未回収リスクは低くなります。
そのため信用力の高い売掛先に対する債権であれば、掛け目も高くなる傾向があります。
ファクタリングの掛け目は保証金のような役割
掛け目はファクタリング会社にとって保証金のような役割を果たします。売掛先が倒産したり、支払い遅延が発生した場合に備えて、掛け目分を差し引いておくことでリスクを軽減します。
掛け目分は一時的に入金から留保され、売掛先からの入金が確認され次第、ファクタリング会社から差額分が支払われることもあります。
この仕組みによりファクタリング会社と利用者の双方がリスクを分散できるのです。
掛け目があると買取金額が一時的に下がる
掛け目が設定されると売掛金全額の現金化はできません。そのため、一時的に資金調達額が下がるというデメリットがあります。
特に資金繰りが厳しい企業にとっては、掛け目が大きい場合に期待していた金額が得られず、運転資金の確保が難しくなる可能性があります。
一方で掛け目分は一定の条件を満たせば後日返還される仕組みとなっており、ファクタリング会社との契約内容を十分に確認することが重要です。
ファクタリングの掛け目はリスク管理のための仕組みとして機能しており、利用者はこの点を理解して契約を結ぶ必要があります。掛け目の設定理由や条件を把握し、資金調達計画に組み込むことが、ファクタリングの適切な利用につながります。
ファクタリングで掛け目が発生する理由・仕組み
ファクタリングで「掛け目」が発生する理由は、売掛債権の買取リスクをファクタリング会社が軽減するためです。掛け目は買取率として設定され、通常80%から95%程度が適用されます。
この割合は売掛債権の信頼性や売掛先の信用力に応じて変動します。以下に掛け目が発生する仕組みとその理由を詳しく解説します。
未回収リスクを考慮するため
ファクタリング会社は売掛先が倒産したり支払いが遅延した場合に、未回収リスクを負うことになります。そのリスクを最小限に抑えるため、売掛金の一部を留保する形で掛け目を設定します。
この留保金は、掛先の支払い状況が正常であると確認された場合に返還されることもありますが、あくまでファクタリング会社のリスクヘッジとしての役割を果たしています。
特に新規取引や不安定な経営状態の売掛先の場合、掛け目が低く設定される傾向があります。
2社間よりも3社間ファクタリングの方が掛け目が高い
ファクタリングには2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがあり、掛け目の設定にも違いがあります。3社間ファクタリングでは売掛先に債権譲渡の通知が行われるため、リスクが低くなり掛け目が高く設定される傾向があります。
一方で2社間ファクタリングは売掛先に通知せず利用者とファクタリング会社の間で契約が結ばれるため、売掛先の支払いが不確実になるリスクがあり、掛け目が低めに設定されることが一般的です。
経営が安定・上場・大手企業は掛け目が高い
売掛先の経営状態が安定している場合や、上場企業や大手企業が売掛先である場合は、ファクタリング会社が未回収リスクを低く見積もるため掛け目が高くなる傾向があります。
例えば売掛先が信用度の高い大手企業であれば、買取率は90%以上になることもあります。一方で、中小企業や経営が不安定な売掛先の場合、リスクが高くなるため掛け目が低く設定されることがあります。
ファクタリングでの掛け目は、利用者とファクタリング会社の双方にとって重要な要素です。利用者は契約時に掛け目の設定理由を理解し、売掛先の信用力や契約条件を慎重に確認することが求められます。
ファクタリングの掛け目が決まる要素
ファクタリングの掛け目(買取率)は、ファクタリング会社が売掛債権を買い取る際にどの程度の金額を支払うかを示す割合であり、一般的には80%から95%程度の範囲で設定されます。
この掛け目はファクタリング契約におけるリスク管理の一環として設定され、いくつかの要素がその決定に影響を与えます。ここでは、掛け目が決まる主な要素について詳しく解説します。
ファクタリングの契約方式
ファクタリングには主に「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2つの契約方式があります。この契約方式によって掛け目が異なります。
2社間ファクタリングでは利用者とファクタリング会社の間で契約が締結され、売掛先には通知が行われません。このため、ファクタリング会社が売掛金の回収に関してリスクを負う割合が大きくなります。
そのため掛け目が低く設定される傾向があります。
一方で3社間ファクタリングは売掛先に債権譲渡の通知が行われるため、売掛金の回収リスクが軽減されます。この方式では掛け目が高く設定されることが一般的です。
売掛先の信用力
売掛先の経営状態や信用力も掛け目に大きく影響します。売掛先が上場企業や大手企業である場合、支払い能力が高いと判断され、ファクタリング会社のリスクが低減します。この場合は掛け目が95%以上になることも珍しくありません。
一方で売掛先が中小企業やベンチャー企業や中小企業の場合、経営の安定性に不安があるため、ファクタリング会社はリスクを考慮して掛け目を低めに設定します。
さらに売掛先が過去に支払い遅延の実績がある場合や、業界全体が不安定な場合も掛け目に影響を与える要因となります。
債権譲渡登記の有無
債権譲渡登記は売掛債権が正式にファクタリング会社に譲渡されたことを第三者に公示する手続きです。この登記が行われることで、売掛先や他の債権者がその売掛金に対する権利を主張できなくなります。
債権譲渡登記が行われている場合、ファクタリング会社の回収リスクが軽減されるため、掛け目が高くなる傾向があります。
逆に登記が行われていない場合はリスクが増大するため、掛け目が低く設定される可能性があります。
申込み企業の会社規模
ファクタリングを利用する申込み企業自体の規模や信用力も掛け目の設定に影響を与えます。大企業や経営が安定している企業の場合、売掛金の回収リスクが低いと判断されるため、高い掛け目が適用されることがあります。
中小企業や設立間もない企業の場合は、経営基盤が脆弱である可能性があるため、ファクタリング会社は慎重なリスク管理を行い、掛け目を低めに設定することがあります。
申込み企業の規模と信用力は、ファクタリング会社のリスク評価において重要な要素です。
利用回数・初回は掛け目が低くなる
ファクタリングの利用実績も掛け目に影響します。初回利用の場合、ファクタリング会社は取引先や利用者の信頼性をまだ十分に把握できていないため、掛け目が低く設定されることが一般的です。
ただし利用実績が増えるにつれて、ファクタリング会社は利用者の信頼性を評価しやすくなり、掛け目が引き上げられる傾向があります。
これは継続的な取引がファクタリング会社にとってもリスクを軽減する材料となるためです。
ファクタリングの掛け目相場
2社間ファクタリングは70〜80%
2社間ファクタリングでは売掛金の譲渡が売掛先に通知されないため、ファクタリング会社は債権の回収リスクを直接負います。
そのため回収不能リスクを考慮して掛け目が低めに設定され、一般的には70〜80%程度が相場となります。例えば、売掛金が100万円の場合、70万円から80万円がファクタリング会社から支払われる金額となります。
2社間ファクタリングは即日入金が可能な場合が多い一方で、リスクが高いため手数料が高くなりやすいのも特徴です。
3社間ファクタリングは80〜90%
3社間ファクタリングでは売掛金の譲渡が売掛先に通知され、売掛先から直接ファクタリング会社へ支払いが行われる仕組みです。この方式ではファクタリング会社が回収リスクを軽減できるため、掛け目が高く設定される傾向があります。
掛け目の相場としては80〜90%が一般的です。
例えば売掛金が100万円の場合、80万円から90万円が支払われる金額になります。また3社間ファクタリングは手数料が比較的低く抑えられるため、利用者にとってコストパフォーマンスが高い選択肢となる場合があります。
掛け目が発生した後のお金の流れは?
ファクタリングで掛け目が設定された場合、売掛債権を基に資金調達する際の具体的なお金の流れは次のようになります。
掛け目・手数料を差し引いた金額が入金される
ファクタリング契約が成立すると、掛け目(買取率)に基づいて売掛債権の金額から一定の割合が差し引かれた金額が、ファクタリング会社から利用者の口座に入金されます。
この差し引かれる金額には手数料も含まれるため、実際に受け取れる金額は売掛債権の額面より少なくなります。
たとえば売掛債権の額面が100万円で掛け目が80%、手数料が5%の場合はファクタリング会社から支払われる金額は以下の通りです。
- 100万円 × 80%(掛け目) = 80万円
- 80万円 – 5万円(手数料) = 75万円
つまりこの場合は利用者は75万円を即座に受け取ることができます。
売掛金の回収後に掛け目が振り込まれる
売掛金が売掛先からファクタリング会社に支払われると、差し引かれていた掛け目の残額が利用者に振り込まれることがあります。
このタイミングで手数料などの費用が精算されるため、契約時に提示された条件に応じた最終的な金額が利用者に渡されます。
この仕組みによりファクタリング会社はリスクを分散しながら、利用者が必要とする資金を即時提供することが可能になります。
掛け目ありは違法ではなく合法である
掛け目が設定される理由は、ファクタリング会社が売掛先からの回収リスクを一定程度担うためです。この仕組みは法律に基づいて運用されており、違法行為ではありません。
特に償還請求権なし(ノンリコース)の契約が一般的なファクタリングでは、掛け目はファクタリング会社がリスクを管理するための重要な要素となっています。
ただし過度に不透明な掛け目や不合理な手数料が提示される場合は注意が必要です。信頼できるファクタリング会社と契約を結ぶことで、安心して資金調達を行うことが可能です。