ファクタリング会社と債権回収会社(サービサー)は両者ともに、債権譲渡に関する取引を行っていますが、利用目的や特徴に明確な違いあります。
今回は混同しやすい両者の違いや目的・手数料について解説していきます。
ファクタリング会社と債権回収会社(サービサー)の違い
ファクタリング会社と債権回収会社(サービサー)はどちらも債権を扱う点で共通していますが、役割や目的は大きく異なります。
ファクタリング会社は売掛債権を買い取ることで、企業の資金調達を支援するのが主な目的です。
債権回収会社(サービサー)は、延滞や不良債権を回収する専門業者として、債権の管理や回収業務を担当します。
ファクタリング会社は売掛債権を即時現金化することで、企業の資金繰りを改善するサービスを提供します。
これに対しサービサーは金融機関や企業から依頼を受け、回収が困難な債権を回収する業務を行います。サービサーは法務大臣の許可を得て業務を行う点で法的規制が厳しいのも特徴です。
ファクタリング会社における債権回収の役割
ファクタリング会社では主に3社間ファクタリングで債権回収業務が発生します。この場合は売掛先へ債権譲渡通知を送り、売掛金を直接ファクタリング会社へ支払うよう指示します。
ファクタリング会社は売掛先から回収した金額を基に収益を確保します。
2社間ファクタリングでは債権譲渡通知を行わないため、売掛金の回収は申込み企業自身が実施します。この方式ではファクタリング会社が売掛金の回収に直接関与しないため、売掛先との関係性を維持したい場合に選ばれることが多いです。
債権回収会社(サービサー)の役割
債権回収会社(サービサー)は、不良債権や延滞債権の回収を専門とする業者です。サービサーは金融機関や企業から債権回収の委託を受け、債務者に対する督促や法的手続きなどを実施します。
これにより依頼主である企業は回収業務の負担を軽減し、効率的な債権管理が可能となります。
サービサーは「債権管理回収業に関する特別措置法」に基づいて業務を行うため、取り立て行為に関する厳しい規制を受けます。
不正行為や違法な取り立ては禁止されており、適正な方法で債権回収が行われます。サービサーは法的に保護された環境で専門的な回収業務を担っています。
ファクタリングの特徴と利用目的
ファクタリングは売掛債権を現金化することで資金調達を行う手法です。取引先からの支払いを待たずに売掛金を現金化できるため、資金繰りを改善しやすくなります。
この仕組みは特に資金繰りが厳しい企業や迅速に資金が必要な場合に重宝されます。
資金調達を行うのが目的
ファクタリングの最大の目的は資金調達です。取引先からの売掛金の入金までに時間がかかる場合、企業は運転資金不足に陥ることがあります。
ファクタリングを活用することで、売掛債権を早期に現金化し、従業員の給与支払いや仕入れ代金の支払いなどに充てることができます。
また借入ではなく債権の売却という形式であるため、貸借対照表に負債が計上されず、財務状況を健全に見せることが可能です。
個人事業主・中小企業が主に利用
ファクタリングは個人事業主や中小企業にとって非常に有用な資金調達手段です。こうした企業は銀行融資の審査に通りにくい場合が多く、ファクタリングを利用することで迅速に資金を確保できます。
取引先との支払いサイトが長期化している場合や、新規事業の立ち上げに伴う一時的な資金不足の解消に役立ちます。
ファクタリングでは確定債権の買取を行う
ファクタリングでは確定債権のみが取引対象となります。確定債権とは商品やサービスの提供が完了し、取引先からの支払いが確定している売掛金を指します。
ファクタリング会社は債権回収リスクを最小限に抑えつつ、利用者に資金を提供します。また売掛債権の取引は通常、売掛先の信用力を重視して行われるため、審査の通過が比較的簡単な場合があります。
ファクタリングは適切に活用することで資金繰りの改善だけでなく、経営の安定化や成長促進にもつながる有効な手段です。
債権回収会社(サービサー)の特徴と利用目的
債権回収会社(サービサー)は、債権回収業務に特化した専門会社であり、主に金融機関や信販会社が利用しています。
これらの会社は債務者からの未回収債権を効率的に回収する役割を担い、不良債権の処理を通じて債権者の損失を最小限に抑えることを目的としています。
金融機関・信販会社が主に利用
サービサー、銀行や信販会社が持つ回収困難な債権を回収するために利用されます。
金融機関や信販会社は、融資やクレジットカードの利用で発生した未回収債権を自社内で処理することが難しい場合、これらの債権をサービサーに譲渡または委託します。
サービサーは専門知識やノウハウを活かし、債務者との交渉や法的手続きを通じて債権の回収を進めます。
不良債権の回収・処理が目的
サービサーの主な業務は不良債権の回収と処理です。不良債権とは貸付金や売掛金のうち、期限までに返済や支払いが行われなかった債権を指します。
不良債権を放置すると債権者の財務状況に悪影響を及ぼすため、サービサーがこれを引き受け、適切な手法で回収を試みます。
具体的には債務者への通知や分割返済の提案、さらに裁判所を通じた強制執行などが行われます。
特定金融債権に含まれる不良債権も対象
サービサーは特定金融債権に該当する不良債権の回収も行います。特定金融債権とは金融機関が保有する貸付金やリース債権、信用保証などのうち、一定の基準で分類された債権を指します。
これらの債権は回収可能性が低いと判断されたものが多く、サービサーの高度な回収技術が求められます。結果として金融機関は債権回収の効率化と損失削減を実現できます。
債権回収会社の利用は、大規模な金融機関や信販会社にで利用される回収の手段であり、不良債権問題の解決に大きく寄与しています。
ファクタリング・債権回収(サービサー)の手数料を比較
ファクタリングと債権回収(サービサー)は、どちらも資金回収を目的とした手法ですが、その手数料には大きな違いがあります。以下では、2社間ファクタリング、3社間ファクタリング、そして債権回収(サービサー)の手数料について詳しく解説します。
2社間ファクタリングの手数料は5〜20%前後
2社間ファクタリングは利用者とファクタリング会社の間で直接契約が行われるため、手数料は比較的高めに設定されます。
一般的に5〜20%の範囲で手数料が発生し、これは売掛先への通知が不要である点や、取引の透明性が低いことに起因しています。
また売掛金の回収は申込み企業が行い、ファクタリング会社へ入金するため、利用者が使い込みをするリスクもゼロではありません。
こうしてリスクを考慮してファクタリング会社が手数料を高めに設定することが多いですが、最短即日など資金調達のスピードを優先したい企業に適しています。
3社間ファクタリングの手数料は1〜10%前後
3社間ファクタリングでは売掛先を含めた契約が行われるため、手数料は1〜10%と低めです。
売掛先に債権譲渡を通知することで、ファクタリング会社はリスクを軽減できるため、手数料を抑えることが可能です。
この方式はコストを重視する企業に向いていますが、売掛先に通知が行われるため、関係性に影響が出る可能性もあります。
債権回収(サービサー)の手数料は2〜3%前後
債権回収(サービサー)の手数料は2〜3%と非常に低い水準に設定されています。サービサーは法的に認められた債権回収業務を専門とする会社であり、主に不良債権の回収を目的としています。
回収リスクが高い債権に対応することが多いものの、回収成功率が高いため手数料が抑えられています。ただしファクタリングとは異なり、資金調達が目的ではないので、あくまでも債権の回収がメインです。
ファクタリング利用時の注意点
ファクタリングは資金調達において有効な手段ですが、利用時にはいくつか注意すべきポイントがあります。
3社間ファクタリングは売掛先に利用が知られる
3社間ファクタリングでは、ファクタリング会社が売掛先に対して債権譲渡を通知します。そののため売掛先にファクタリングの利用が知られることになります。
これにより売掛先が利用企業の経営状態を不安視する可能性があるため、取引関係が悪化するリスクもあります。
売掛先との信頼関係を重視している場合は、通知の影響を十分に考慮する必要があります。通知が避けられないため、事前に売掛先との合意を得ることがトラブル回避の鍵となります。
利用頻度が高いとキャッシュフローを圧迫する
ファクタリングを頻繁に利用すると手数料が積み重なり、結果的にキャッシュフローを圧迫するリスクがあります。
資金繰りが厳しい状況で短期間に繰り返し利用すると、資金調達にかかるコストが増加し、経営全体に負担をかける可能性が高まります。
ファクタリングはあくまで一時的な資金調達手段として利用し、根本的な経営改善を図る必要があります。過度な依存を避けるため、資金計画を明確にし適切なタイミングで利用することが重要です。
ファクタリングは分割払いできない
ファクタリングは売掛債権を一括で譲渡し、その対価として資金を調達する仕組みです。そのため基本的に分割払いには対応していません。
ファクタリングは貸付ではなく、売掛債権の売却を前提とする取引形態であるため、分割払いを求めることは契約上不可能です。
もしファクタリング会社が分割払いを提案してくる場合、その取引が本来のファクタリングではなく、違法な融資行を行うために隠れ蓑にしている可能性があります。
こうした取引に関与すると、契約違反や法律上のトラブルに発展する恐れがあるため注意が必要です。
悪徳業者・ヤミ金業者が存在する
ファクタリング業界には法を遵守せず高額な手数料を取る悪徳業者や、実質的にヤミ金と同じ運営を行う業者も存在します。
これらの業者は「審査なし」「即日資金調達可能」といった言葉で利用者を集客し、高額な手数料や違法な契約を強いるケースがあります。
また償還請求権を契約書に盛り込むことで、売掛先が支払いを滞らせた際に利用者へ返済を求めるなど、法的に問題のある取引が行われることもあります。
悪徳業者を避けるためには契約書の内容をよく確認し、信頼できるファクタリング会社を選ぶことが重要です。口コミや評判をチェックし、公式ウェブサイトで固定電話番号や住所が明記されているかを確認することも効果的です。
債権回収会社(サービサー)利用時の注意点
法務省の認可が降りている会社を選ぶ
債権回収会社(サービサー)を利用する際は、法務省から正式に認可を受けているかどうかを確認することが非常に重要です。
日本ではサービサー法(債権管理回収業に関する特別措置法)に基づき、特定の債権回収業務を行う会社は法務省の許可を得る必要があります。
認可を受けていない業者は違法な運営を行っている可能性が高く、利用者に不利益をもたらすリスクがあります。認可を確認するためには、法務省の公式サイトや業者の登録番号を確認する方法があります。
信頼性の高いサービサーを選ぶことで、不当な請求やトラブルを避けることができます。
債権回収を名乗った詐欺会社に注意する
債権回収業務を装った詐欺会社も少なからず存在します。これらの詐欺会社は債権回収を理由に虚偽の請求を行い、不正に金銭をだまし取ろうとする手口を用います。
詐欺会社の特徴として正確な会社情報を提供しない・連絡先が携帯電話のみである・公式ウェブサイトに情報が不足しているなどが挙げられます。
また請求書や通知の内容が曖昧で、具体的な債権の詳細が記載されていない場合も注意が必要です。こうした詐欺に巻き込まれないためには、身元が確かな認可済みのサービサーを利用することが重要です。
不審な請求を受けた場合は速やかに弁護士や専門機関に相談し、法的手段を講じることが推奨されます。
督促のフローを把握し差し押さえを防ぐ
債権回収会社(サービサー)を利用する際、督促の流れを理解しておくことは、差し押さえといった法的措置を回避するために非常に重要です。督促のフローは次のような段階を経て進行します。
- 初期督促
債務者に対して最初の連絡が行われる段階で、電話や郵送で返済を促す通知が送られます。
この時点で債務の状況を確認し、適切な対応を行うことが重要です。 - 再督促
初期督促で返済が行われない場合、再度通知が行われます。
内容証明郵便を使用する場合もあり、法的手続きに移行する可能性があることを示唆する内容が含まれることがあります。 - 最終通知
再督促でも返済がなされない場合は最終的な通知が送られます。
この段階で法的措置を含む強制的な回収手続きに進む可能性が高まります。 - 法的措置の開始
最終通知後も返済がない場合、差し押さえを含む法的手続きが開始されます。
裁判所を通じた強制執行によって、預金口座や給与などの資産が差し押さえられることがあります。
このような流れを事前に把握し督促の初期段階で適切に対応することで、差し押さえを防ぐことができます。
債務者が連絡を無視したり放置したりすると、事態が悪化し取り返しがつかなくなる場合もあるため、誠実に対応し必要に応じて専門家に相談することが大切です。