近年新しい資金調達方法として注目されているファクタリングですが、これまでの確定債権とは異なる将来売上に対するファクタリングも登場しています。
SaaS企業の場合は固定売上がある程度確定しているため、将来予測もしやすいのが特徴です。この特性を活かして資金調達できるのが、SaaS向けファクタリングです。
今回はSaaS向けファクタリングのメリットやデメリットを解説しながら、おすすめの将来債権ファクタリング会社を紹介していきます。
SaaS向けファクタリングとは？ファクタリングとの違い
将来発生する未来の予測売上（将来債権）を現金化
SaaS向けファクタリングは将来発生する売上を売却することで現金化する仕組みです。具体的にはSaaS企業が顧客と結んだ月額や年額の契約から得られる予測売上（将来債権）を基に資金調達を行います。
通常のファクタリングでは確定した売掛金を売却しますが、SaaS向けファクタリングでは将来のキャッシュフローを資金化するため、成長中のSaaS企業にとって大きなメリットがあります。
これにより契約期間中のキャッシュフローを早期に確保でき、新規顧客獲得やマーケティング費用に活用することが可能です。
通常ファクタリングは確定した過去の売上（確定債権）を現金化
通常のファクタリングは、取引先に発行した請求書や納品済みの売掛金といった確定債権を売却して現金化します。
そのため売掛金の回収リスクを減らしながらも迅速に資金を調達できる点が特徴です。一方SaaS向けファクタリングでは未発生の予測売上を対象にしているため、資金調達の対象範囲が広がります。
こうした違いからSaaS向けファクタリングは成長中で収益モデルが安定している企業にとって有効な選択肢となります。
ただし予測売上を評価する際には厳密な審査が必要となり、通常ファクタリングとは審査基準や手数料構造が異なる点に注意が必要です。
SaaS向けファクタリングおすすめ会社4選！将来債権の売却で資金調達
ファクタリングロボ for SaaS
ファクタリングロボ for SaaSは、SaaS企業に特化したファクタリングサービスを提供しています。
このサービスでは月次売上（MRR）をもとにした資金調達が可能で、最短5日で現金化できます。また、従来の融資と異なり負債として計上されないため、財務指標を維持しつつ資金繰りを改善できる点が大きなメリットです。
手数料も透明で、企業の成長段階に応じた柔軟な資金調達が可能です。
RBF by PAYTODAY
RBF by PAYTODAYは、SaaS企業の将来収益をベースに資金を調達できるサービスです。データ連携を活用した迅速な審査プロセスにより、最短で数日以内に資金が提供されます。
また契約後も利用状況や売上データに応じた柔軟な対応が可能で、成長中の企業にとって便利な選択肢です。さらに、負債を増やさずにキャッシュフローを安定させることができるため、エクイティファイナンスを避けたい企業に最適です。
Yoii Fuel
Yoii Fuelは、SaaS企業向けにスピーディーな資金調達を可能にするファクタリングサービスです。将来の継続的な売上であるMRR（月次売上）を基準に資金を提供し、最短数日で必要な資金を調達できます。
利用には担保や保証人が不要で、審査プロセスもオンラインで完結するため、手間をかけずにキャッシュフローを改善できます。また資金調達額や手数料が透明に提示される点も信頼性の高い特徴です。
Flex Capital
Flex Capitalは、柔軟な資金調達を実現するために設計されたSaaS企業向けのファクタリングサービスです。このサービスは、成長中のSaaS企業に適した大規模な資金調達が可能で、数千万円から億単位の調達にも対応します。
MRRを基準に資金提供が行われるため、安定した収益があれば迅速に資金を確保できます。さらに負債として計上されないため、企業の財務状態を健全に保ちながら事業拡大を進められる点が魅力です。
SaaS向けファクタリングのメリット
最短5日程度とスピーディーに資金調達
SaaS向けファクタリングの大きなメリットの一つは、資金調達までのスピードです。
銀行融資や他の資金調達方法では数週間から数ヶ月かかる場合がありますが、SaaS向けファクタリングでは最短で5日程度で資金が手に入ることが特徴です。
この迅速な資金調達は、事業拡大や突発的なコストへの対応が求められるSaaS企業にとって非常に有用です。
また手続きがオンラインで完結する場合も多く、申込みから資金調達までのプロセスが効率化されています。
数千万円〜億単位のまとまった大きな金額を調達できる
SaaS向けファクタリングは、数千万円から億単位の大規模な資金調達が可能です。SaaS企業が提供するサブスクリプション型のビジネスモデルが安定した将来収益を見込めるため、ファクタリング会社が高い評価を与えるからです。
急速な事業拡大を目指すスタートアップや成長期のSaaS企業にとって、この特徴は大きなメリットとなります。
例えば大規模なシステム開発やマーケティング予算の投下、さらには海外市場への進出といった場合には、通常のファクタリングや融資では賄いきれない資金が必要です。
このような場合でもSaaS向けファクタリングを利用すれば、将来の売上を現金化して資金を確保できるため、資金繰りの課題を解決できます。
まとまった資金を一度に調達できることは、従来の分割的な資金調達に比べて資金計画を立てやすくし、短期間での大きな事業展開を可能にします。
これにより競合他社よりも先に市場での地位を確立するチャンスをつかむことができるのです。
エクイティファイナンスのような株式放出は不要
SaaS向けファクタリングでは、エクイティファイナンスのように株式を放出する必要がありません。スタートアップや成長期の企業にとって、株式の希薄化を避けたいというニーズは強くあります。
株式を放出すると経営者の持株比率が低下し、経営権の一部を失うリスクがあるため慎重に考慮されるべきです。
SaaS向けファクタリングを活用すれば、将来のサブスクリプション収益を現金化して資金調達が可能なため、株主構成を維持しつつ必要な資金を得られます。
この仕組みにより経営者は株式を放出せずに迅速な事業拡大を実現でき、投資家からの信頼も損なわない点が大きなメリットです。
さらにエクイティファイナンスと比較して、資金調達プロセスが短期間で完了するため、成長の機会を逃さずに済みます。
デットファイナンス・借入のように負債にならない
SaaS向けファクタリングはデットファイナンスや借入と異なり、負債として計上されないため、貸借対照表（バランスシート）に悪影響を及ぼしません。
通常の借入では負債が増加し財務状況の悪化や銀行の格付け低下を招く可能性があります。しかし、ファクタリングは売掛債権を現金化する仕組みであるため、負債ではなくオフバランス化が可能です。
これにより自己資本比率やROA（総資産利益率）が改善され、財務的な健全性を維持できます。また負債がないため、今後の融資枠にも影響を与えず、さらなる資金調達が容易になります。
担保・保証人が不要で資金調達
SaaS向けファクタリングの大きな特徴は、担保や保証人が不要で資金調達が可能な点です。通常の融資では、不動産や機械設備などの資産を担保として提供したり、第三者に保証人となってもらう必要があります。
しかしファクタリングは将来のサブスクリプション売上などの将来債権を現金化する仕組みのため、物的担保や人的保証を求められることがありません。
そのためまだ実績が少ないスタートアップや、小規模のSaaS事業者でも利用しやすく、スムーズに資金調達を行えます。
また担保や保証人を用意する手間がないため、資金調達プロセスが迅速で、必要な資金を短期間で確保することが可能です。
担保を提供できる資産がない企業や、保証人を依頼する負担を避けたい事業者にとって、SaaS向けファクタリングは魅力的な選択肢と言えるでしょう。
SaaS向けファクタリングのデメリット
一定のMRR（月次売上）が必要となる
SaaS向けファクタリングを利用するには、企業が一定のMRR（月次売上）を維持していることが求められます。
ファクタリング会社は将来発生する売上を資金調達の基盤としているため、MRRが安定していないと、信用リスクが高いと判断される可能性があります。
このため売上が不安定な場合や、サービス開始直後でMRRが十分に確保できていない場合は、審査を通過しづらい点がデメリットといえます。
MRR（月次売上）が低いと調達額が小さくなる
MRRの規模が資金調達額に直接影響を与える点も、SaaS向けファクタリングのデメリットです。
MRRが低い企業の場合はファクタリング会社は将来の売上規模に基づいて調達可能額を算出するため、期待通りの金額を調達できない可能性があります。
これにより成長のために必要な大規模な資金調達を目指している場合には、他の資金調達手段との併用を検討する必要が出てきます。
さらにMRRの規模によっては手数料率が高く設定される場合もあり、コストがかさむ可能性があるため、コスト対効果を十分に考慮した上で利用を決める必要があります。
2〜10%程度の手数料が発生する
SaaS向けファクタリングを利用する際には、売上に対して2〜10%程度の手数料が発生します。これは将来の収益を前倒しで現金化するためのコストであり、利用企業にとって一定の負担となります。
手数料率は売上の安定性やMRR（月次売上）の規模、契約期間などによって変動します。
たとえばMRRが高く、売上が安定している企業ほど手数料率は低く抑えられる傾向にありますが、成長段階の企業や売上が不安定な場合には高めの手数料が課されることがあります。
この手数料はエクイティファイナンスや借入と比較しても低いといえますが、キャッシュフローに与える影響は考慮する必要があります。
SaaS向けファクタリングがおすすめのケース
PMFが完了し広告費を大きく投下したい
SaaSビジネスにおいてプロダクト・マーケット・フィット（PMF）が完了すると、顧客基盤を拡大するために広告費を一気に増やすタイミングが訪れます。
この際は手元の資金だけでは十分な規模の広告投資ができないことが多く、迅速な資金調達が求められます。SaaS向けファクタリングは、将来の継続的な収益（MRRやARR）を担保として現金を調達する仕組みです。
これにより株式を放出する必要があるエクイティファイナンスや、負債を増やすデットファイナンスを避けながら資金を確保できます。
迅速な資金調達は広告投資による顧客獲得効果を最大化するための重要な要素です。ファクタリングを活用することで、迅速にキャッシュを得て、競争優位を築くための広告戦略を実行できる点が、特に成長期のSaaS企業にとって大きなメリットとなります。
新規事業への投資・M&Aなどに投資したい
SaaS企業が成長を加速させるためには、新規事業への投資やM&Aが効果的な戦略となる場合があります。しかし、これらの取り組みには多額の資金が必要で、通常の運転資金や内部留保だけでは対応できないケースも多いです。
SaaS向けファクタリングを活用すれば、将来の収益であるMRRやARRを担保に迅速な資金調達が可能です。
この方法なら既存株主の持ち分を希薄化させることなく、また負債を増やさずに資金を確保できるため、企業の財務バランスを保ちながら成長戦略を推進できます。
M&Aでは短期間で資金を用意する必要がある場面も多く、ファクタリングのスピーディーな資金調達は大きな強みとなります。
また新規事業への投資においても、すでに安定した収益基盤を活用して迅速に資金を投入できるため、競争が激しい市場環境でのスピード感ある事業展開が可能となります。
SaaS向けファクタリングの注意点
目安として半年以上の事業運営実績が必要
SaaS向けファクタリングを利用する際、事業運営実績が少ないと審査を通過しにくくなります。多くのファクタリング会社では、目安として半年以上の継続的な事業実績が求められます。
これは、MRR（月次売上）や顧客の継続率など、安定した収益モデルがあるかどうかを確認するためです。
事業開始直後でこれらのデータが不足している場合は、ファクタリング会社に信頼されにくく、調達可能な資金が限られる可能性があります。
契約には決算書・登記簿謄本・通帳コピーが必要
ファクタリング契約を結ぶ際、事前に提出する書類が複数必要となります。主な書類としては、直近の決算書・登記簿謄本・そして取引を証明する通帳のコピーが挙げられます。
これらの書類は事業の信頼性や財務状況を審査するために必要です。決算書には収益モデルの健全性や利益率が反映されるため、適切に管理しておくことが重要です。
また登記簿謄本や通帳コピーは、企業の実態や取引履歴を確認するために使用されます。これらの書類が揃っていないと、審査がスムーズに進まず、資金調達までの時間が長引く可能性があります。
SaaS向けファクタリングに関するよくある質問
RBF（レベニュー・ベースド・ファイナンス）とは何ですか？
RBF（レベニュー・ベースド・ファイナンス）は、売上に基づいた資金調達方法の一種です。この仕組みでは、企業が一定の割合で毎月の売上から返済を行うため、固定額の返済が必要な従来の融資とは異なります。
売上が変動が少ないSaaS企業にとって柔軟な資金調達手段として注目されています。例えば売上が多い月には多めに返済し、売上が少ない月には返済額が減る仕組みになっています。
このためキャッシュフローに無理をかけずに資金調達が可能です。また株式を放出せずに資金調達できるため、企業の経営権が損なわれる心配もありません。
将来債権ファクタリングとは何ですか？
将来債権ファクタリングは、将来発生する見込みの売上を元に資金調達を行う手法です。
通常のファクタリングが確定した売掛金を対象とするのに対し、この方法では契約済みのサブスクリプションや継続的な取引から得られる収益予測に基づいて資金を調達します。
たとえばSaaS企業が1年間の契約を結んでいる場合、その契約に基づく将来の収益を売却して、早期に資金を得ることができます。
この仕組みは短期的な資金ニーズを満たすだけでなく、広告費や新規事業への投資といった成長戦略を支えるためにも活用されています。
ただし予測される収益が安定していない場合や契約が短期間で終了するリスクがある場合、調達可能な金額が制限されることもあります。
